Research Abstract |
1.30年生スギ樹冠,土壌両層のリター上において最も優占していたトビムシ(Xenylla brevispina)について,その生活史および密度の季節変化を明らかにし,本種の樹冠層と土壌層の利用様式と本種個体群の維持における両層間の移動の適応的意義について議論した.個体数密度および占有率の季節変化から,樹冠層と土壌層の集団は互いに密接に関連しており,本種が森林の三次元構造を効率的に利用する種であることを示した.すなわち,耐乾性に優れる本種は,土壌層と樹冠層の間の垂直的な移動によって,繁殖と競争回避において適した場所の選択を可塑的に行なっており,これにより,本スギ林内の最優占種の地位を確立できたと結論づけた.一方,本種の樹冠層から土壌層への移動は,クモ等の普遍的な樹上性捕食者に対して餌資源を供給することになるため,このような腐食性節足動物の上方への移動(腐食流入detrital infusion)が,他の樹上性節足動物の群集構造に大きな影響を及ぼしている可能性を強く示唆した. 2.沖縄本島イタジイ林内の着生シダ(オオタニワタリ)の構造的特徴,サイズ,着生高,個体間距離や着生樹木のサイズが,腐食・菌食性のササラダニの群集構造に及ぼす影響を明らかにした.シダ上に堆積するリター量は,シダのサイズによってのみ決まっていた.シダ内から51999個体,比較のための林床から18706個体の無脊椎動物を採取し,いずれにおいてもササラダニ類が個体数および種数ともに優占していることを明らかにした.シダ堆積リター内のササラダニ群集では,その種数・個体数とシダのサイズとの間には正の相関があり,サイズにより種組成も異なっていた.また,着生樹木のサイズが大きくなるにつれてササラダニの種多様度は高くなったが,シダ間の距離だけは,ササラダニの群集構造には影響を及ぼさなかった.したがって,シダの構造や着生樹木サイズの多様性は,シダ内に生息するササラダニの種多様性に影響を及ぼすことが明らかとなった.
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