2005 Fiscal Year Annual Research Report
花粉1粒を対象とした遺伝子型判別による樹木の送粉過程解析
Project/Area Number |
17380095
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50325130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (60282315)
柴田 銃江 森林総合研究所, 森林植生研究領域, 主任研究官 (10343807)
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Keywords | 送受粉 / 適応度 / 繁殖成功 / 生物保全 / 被子植物 |
Research Abstract |
花粉1粒を対象としたPCRによる遺伝子増幅を正確に行うために、最適なマイクロサテライトマーカーの選定と反応の最適条件を明らかにした。また、マルチプレックスPCR法の導入も試み、解析効率の著しい向上を達成することが出来た。 野外調査サイトの整備も予定通り行った。小川学術参考林(北茨城市)の天然林に生育するホオノキ繁殖個体の樹冠において訪花昆虫を採集した。採集した訪花昆虫を大型甲虫類、小型甲虫類、マルハナバチ類等に類別し、体表に付着していた花粉粒を一粒ごとに分離し、その遺伝子型をマイクロサテライト遺伝マーカーを用いて直接判別した。昆虫ごとに付着花粉の自家花粉率(昆虫を採集したホオノキ個体由来の花粉粒の割合)を算出した。 昆虫付着花粉の自家花粉率は昆虫ごとに大きく異なり、大型甲虫類の自家花粉率は小型甲虫類、マルハナバチ類と比較して有意に低かった。また、自家花粉以外の花粉には複数の遺伝子型が見られた。マルハナバチ類の自家花粉率は、多くが80%以上と高い値を示した。マルハナバチ類は形態的特徴や行動様式などから優秀な送粉者であると推定されていたが、本研究の結果では、マルハナバチに付着した花粉粒の多くは採集された場所のホオノキ個体由来のものであった。近交弱勢が観察されているホオノキにとっては、マルハナバチの訪花は自家受粉を促す点において好ましくない訪花者であると考えられる。一方で、運動量や学習能力が比較的低く、送粉者として有能ではないとされていた大型甲虫類に付着した花粉粒の自家花粉率が低かったことから、大型甲虫類はホオノキの他家受粉を促す、優れた送粉者であることが示唆される。 実際の生態系における送粉者の機能を正しく評価するためには、本解析のアプローチがきわめて有効であることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)