2007 Fiscal Year Annual Research Report
花粉1粒を対象とした遺伝子型判別による樹木の送粉過程解析
Project/Area Number |
17380095
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 Kyoto University, 農学研究科, 教授 (50325130)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
柴田 銃江 森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (10343807)
|
Keywords | 送受粉 / 適応度 / 繁殖成功 / 生物保全 / 被子植物 |
Research Abstract |
ホオノキ樹冠から採集した様々な昆虫から花粉粒をとりだし、一粒ごとに遺伝解析を行った。解析した昆虫類と花粉粒は、マルハナバチ類11個体より488粒、ハナムグリ類12個体より534粒、ハムシダマシ等小型甲虫類10個体より489粒である。5遺伝子座による遺伝子型の決定に基づいて、昆虫を採集した樹木個体に由来する自家花粉と、別樹木個体に由来する他家花粉を識別した。その結果、学習能力と運動能力の高さから、従来、優れた送粉者と考えられてきたマルハナバチ類に付着した花粉の自家花粉率が88%と高いことがわかった。逆に、学習能力が低く、また、動きも活発でないハナムグリ類は、他のタイプの昆虫に比べると送粉能力が劣っていると考えられてきたが、他家花粉率が高く、送粉者として優秀であることが明らかになった。 また、樹木においてしばしば観察される、開花結実量の著しい年変動(マスティング)と、昆虫体表に付着した花粉粒の量的、質的解析も行った。その結果、マスティングによる著しい結実量の年変動にもかかわらず、受精に関与した花粉の遺伝的質には有意な差がないことが分かった。また、断片化したサイトと保護林において昆虫体表付着花粉粒の遺伝的質に関して比較解析を行った結果、両者には有意な差がなかった。マスティングや断片化はいずれも、開花密度の変動をもたらすものであるが、低頻度で個体群が維持されているホオノキは本来的にこの様な開花密度の変動に対応できる特性を備えていると考えられる。 この様に、本研究によって、送粉共生系における昆虫の機能評価を行うに際しては、従来行われてきた、昆虫の量と種類を解析するだけでは不十分であり、植物の繁殖過程に対する昆虫の送奮機能の適切な評価のためには花粉粒の遺伝解析が不可欠であることが明らかになった。
|
Research Products
(14 results)