Research Abstract |
気候変動影響評価に資する流域蒸散量の測定方法・推定方法を開発し,森林の立地,樹種,管理等による蒸発散量の動態を明らかにした.流域斜面の上部と下部の同一林齢のスギでは,樹木サイズ・立木密度は大きく異なるが,総辺材面積・辺材面積当たり林分平均樹液流速密度に大差がないため,林分蒸散量は上部と下部で大差がなく,1箇所における必要サンプル数の樹液流速計測だけで流域蒸散量を推定できることを示唆した.また,森林の蒸発散量を立木密度や樹高と関連付けて,プロセスに基づいてモデル化することに成功した.得られたモデルを使って広葉樹林と針葉樹人工林の蒸発散量の違いを検討し,日本においては広葉樹林と針葉樹人工林で年間蒸発散量がほとんど異ならないことを新たに示し,通説の誤りを指摘した.また,森林管理が蒸発散量に与える影響もモデルによって評価し,森林管理によって年蒸発散量が年降水量の5%程度減少するとの結果を得た. 4演習林(九州大学北海道・福岡・宮崎,宮崎大学田野)において水収支と物質収支の観測を行い,森林が水・物質循環に与える影響の調査を継続している.その結果,福岡演習林御手洗水流域における渓流水中の無機態窒素濃度が,日本の中でも特異的に高いことが明らかになった.現在,大気〜森林〜土壌〜基岩〜渓流に至る水・物質の動態を調べ,その原因解明による水・物質循環プロセスの解明に取り組んでいる.また,各演習林において森林動態観察プロットを整備・新設し,各プロットにおいて森林構造の観測を実施した.さらに,高時間分解能衛星データ(SPOT/VGTとTerra/MODIS)を用いて,4演習林のNDVIの季節変動パターンを明らかにした.衛星データによるNDVIの上昇と下降の時期は,植生生物季節の地上観測とも良く対応しており,衛星データから葉の出現と消滅の時期をと良く捉えられることを明らかにした.
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