2007 Fiscal Year Annual Research Report
人為的干渉による湿原からハンノキ林への移行メカニズムの解明
Project/Area Number |
17380100
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
矢部 和夫 Sapporo City University, デザイン学部, 教授 (80290683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 隆俊 東京農業大学, 生物産業学部, 講師 (80408658)
山田 浩之 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (10374620)
岡田 啓嗣 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (30333636)
植村 滋 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80250497)
石川 幸男 専修大学北海道短期大学, 園芸緑地科, 教授 (80193291)
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Keywords | 湿原保全 / ハンノキ林化 / 水理解析 / 水文化学環境 / 野火 / 電気探査 / 蒸発散量 / 年輪判読 |
Research Abstract |
年輪成長量に対して、pHが正の相関を示した。従って先年提示したハンノキ林は水位変動が低い環境で成立することと、成長は酸性化によって抑制されるという結果が得られた。また、ハンノキ種子の発芽には水没しない環境が必要であり、稚樹の生残には根圏が長時間地下水にさらされない環境が必要となることが示唆された。同時に、稚樹の成長には水質環境(pH)が重要となることが示された。水位観測からは年最大水位はハンノキ林のほうがフェンより低いという結果がえられた。また,堤防設置の影響を数値実験的に検討した結果,堤内外地間の地下水浸透流の遮断が生じることと,それに伴い堤内地の地下水位の上昇が生じることが分かった.また、ハンノキ林外周に稚樹は非常に少なく、その樹齢は10年未満のものがほとんどで定着の年代は不連続であった。またこれら稚樹の成長速度は、各ラインの上層個体の初期成長速度に比べて小さかった。これらより、現状のハンノキ林は拡大傾向にはないものと判断された。航空写真によるとハンノキ林は野火後の数年間に急速に拡大していた。人為的水位安定化により、pHの高いフェン内に定着可能な環境ができ、野火をきっかけにして、急速にハンノキ林化が進んだ可能性が考えられる。 その他群落の構造と成長解析について、広里地区のハンノキは矮生低木群落で株状更新し、樹高成長の頭打ち傾向が強く、シュートの頻繁な枯死と萌芽更新が見られた。シュートの寿命が制限される要因としては、短い個葉の寿命に関連するリン制限の可能性が考えられた。また、新システムによる高密度電気探査を実施した結果、堤防近傍と湿原の内部との電導度差が見出され、堤防が何らかの作用を与えていることが推察された。蒸発散特性を評価した結果、ハンノキ侵入の水収支への影響は原植生とハンノキの現存量に依存することが示唆された。次に、炭素収支について、炭素固定量・放出量ともにフェンよりハンノキ林で大きく、ハンノキ侵入は泥炭への炭素の蓄積を減少させると推測された。
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Research Products
(11 results)