2007 Fiscal Year Annual Research Report
樹木木部柔細胞からの過冷却促進物質の同定とその応用に関する研究
Project/Area Number |
17380101
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤川 清三 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 教授 (50091492)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 圭太 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (00241381)
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Keywords | 過冷却 / フラボノイド / フラボノール配糖体 / 樹木木部柔細胞 / カツラ / 凍らない水 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 低温保存 |
Research Abstract |
樹木の木部柔細胞は深過冷却というユニークな機構により、-40℃前後の低温下でも数週間にわたり細胞内水分を液体状態に保つことができる。前年までに、カツラを材料として、その木部には水の過冷却を著しく促進する、ケンフェロール-7-0-グルコシド、ケンフェロール-3-0-グルコシド、ケルセチン-3-0-グルコシド、及び8-メトキシケンフェロール-3-0-グルコシドが存在することを明らかにした。 本年度は、まず、これらのフラボノール配糖体が木部柔細胞内に存在することを、組織化学的にフラボノイドを特異的に染色して蛍光及び共焦点レーザー顕微鏡による観察で確認した。フラボノイドの存在は液胞を除く細胞質全体で顕著であった。 引き続き、これらフラボノール配糖体の組織特異的蓄積変化、及び季節的蓄積変化をHPLCにより定量した。しかしながら、これらフラボノール配糖体はいずれも、深過冷却する木部柔細胞のみならず、細胞外凍結する師部組織細胞にも蓄積し、明瞭な過冷却組織への特異的蓄積傾向を示さなかった。また、木部においても深過冷却能力の大きく異なるの夏と冬においても同等量の蓄積をした。これらの結果は、既に同定した4種類のフラボノール配糖体以外に存在する、多様な過冷却促進物質が協働して、木部柔細胞の過冷却を促進する可能性を示唆した。 また、同定した過冷却促進物質の応用研究として、ケンフェロール-7-0-グルコシドを0.1〜0.01%(W/W)加えた溶液でのブタ肝臓細胞の-5〜-8℃での過冷却での長期保存を試み、1週間以上の長きに渡り過冷却が持続し、良好な保存成績を得ることができた。現在、この研究で得られた過冷却促進物質を「凍らない水」を応用する多種産業分野へのさらなる応用の可能性を検討している。
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Research Products
(30 results)