Research Abstract |
担子菌Phanerochaete chrysosporiumがセルロース分解培養系の中で生産する糖質加水分解酵素ファミリー(GHF)のうち,機能的にGHF1に属する2つのβ-グルコシダーゼおよびGHF74に属するキシログルカナーゼ74Bについて組換え体酵素として生産し,その機能を精査した。 まず,キシログルカナーゼ74Bは活性中心ドメインと糖質結合モジュールCBM1によって構成される酵素であることを明らかにした。また,その酵素機能としては,キシログルカンに対して活性特異性が高く,側鎖をもたない主鎖残基のグルコシド結合の加水分解を選択的に触媒することを明らかにした。また,本酵素は既知のキシログルカナーゼとは異なる基質認識を示し,DP16-18のキシログルカンオリゴ糖を中間生成物として与える性質を特徴とすることを示した。 GHF1に属する2種のβ-グルコシダーゼうちの一つであるBGL1Aについて結晶を取得し,その3次元構造を明らかにした。また,BGL1BについてもBGL1Aの構造に基づくモデリングによって,その3次元構造を推定した。その結果,両者では,活性中心を取り巻くアミノ酸残基は-1サイトでは完全に保存されていたのに対して,+1サイトにおいては5つのアミノ酸残基に相違が認められた。そこで,BGL1Aについてこれらのアミノ酸残基をBGL1Bに対応するアミノ酸残基に置き換えを行った部位特異的変異体を作成し,その反応特性に与える影響について解析を行った。その結果,D229N変異体においては,反応のpH依存性を著しく改変することに成功した。 以上のことから,P.chrysosporiumがセルロース分解系において生産する多様な酵素について,プロテオーム解析にはじまり,それに対応するcDNAの取得,さらに組換え酵素の生産,さらに得られた酵素についてその構造ならびに機能解析までに至る一連の実験系が本研究の成果により確立された。
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