2005 Fiscal Year Annual Research Report
海藻のアレロケミカルによる植食動物幼生と付着珪藻の排除機構に関する研究
Project/Area Number |
17380111
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 和也 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (40282082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 実 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (70050680)
吾妻 行雄 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (50292256)
伊藤 絹子 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (90191931)
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Keywords | 海中林 / キタムラサキウニ / エゾバフンウニ / ブロモフェノール / 変態 / 無節サンゴモ / 磯焼け / 光合成 |
Research Abstract |
海中林構成海藻アラメ・クロメが分泌する2種のブロモフェノールがキタムラサキウニとエゾバフンウニの幼生に対して1〜10ppmで変態を阻害し、20〜50ppmで死亡させることを明らかにした。ウニ幼生は紅藻無節サンゴモ優占群落で変態して発生するが、海中林内では海底に無節サンゴモが生育していても変態個体は少なく、変態個体の死亡率も著しく高いことが知られている。この原因は海中林がウニ幼生の変態阻害物質を分泌しているためであると考え、ウニ幼生の変態誘起揮発物質ジブロモメタンに1時間被曝後、揮発物質ジブロモフェノールとトリブロモフェノールを2種の幼生に被曝させた。その結果、変態阻害濃度と死亡させる濃度を明確に明らかにできた。また2種のブロモフェノールに対する感受性は種によって異なることも明らかになり、受容体との構造相関が示唆された。 海中林構成海藻カジメは、26〜30℃の高水温と12.5μmol/m2/秒以下の低光強度では死亡すると考えられていた。本研究によって、高水温で10μmol/m2/秒の低光強度であっても、富栄養であれば光合成速度を維持し、炭素・窒素など物質を生産して成長できることを初めて明らかにした。海中林は、磯焼けと呼ばれて高水温・貧栄養の海況条件で深所から死亡個体が増加して衰退することが知られる。磯焼けの発生機構を明らかにするため、カジメの生理学的閾値を水温、光強度、栄養塩濃度、塩分濃度、流速の複合条件下で光合成速度の測定と培養実験を行った。培養実験の結果、貧栄養では高水温、低光強度、低流速では生育が阻害され、死亡するが、富栄養であれば、物質を生産・蓄積し、クロロフィル量を増加して生育を補償することが分かった。またカジメの光合成速度は、10μmol/m2/秒の低光強度、2psuの低塩分濃度であっても富栄養であれば維持され、貧栄養であれば阻害されることが示唆された。
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Research Products
(7 results)