Research Abstract |
前年度に引き続き,越喜来湾においてD.fortiiと,その葉緑体の起源クリプト藻の出現関係を調査した.起源クリプト藻は2006年には5月18日の水深10mに1.4×10^4cells・L^<-1>出現し,5月30日の水深0mに1.9×10^5cells・L^<-1>,10mに1.2×10^5cells・L^<-1>,20mに9.5×10^4cells・L^<-1>の密度で顕著に出現した後一旦減少し,また6月16日の0mに2.8×10^4cells・L^<-1>出現した.D.fortiiは6月16日水深15mにおいて50cells・L^<-1>の密度で出現し,この時は起源クリプト藻の最大出現時と同日であった.以上から,これまでに確認された事項,すなわち,D.fortiiとその起源クリプト藻の出現には高い相関が見られることを本年においても確認した. なお,本年度においては,定量PCR法を用いた葉緑体起源クリプト藻のモニター方法を開発にも着手した.GenBankより得たDinophysis5種,クリプト藻11種の葉緑体SSU rDNA配列より,Dinophysisおよびその起源クリプト藻と考えられるTeleaulax属クリプト藻に特有の配列を見出し,約20bpのTaqManプローブと,それを挟む100-200bpの領域の両端に約20bpのリアルタイムPCRプライマーセットを設計した.その特異増幅性を天然Dinophysis細胞およびクリプト藻培養株を用いて確認した後に,フィルターにトラップしたプランクトン試料からのDNA抽出法,定量PCR分析法のトライ&エラーを経て,天然海水中に出現する葉緑体起源クリプト藻を網羅的に検出できるシステムを開発した.このシステムを用いて,2006年度の試水を分析し,その結果を従来のFISHで求めたものと比較した.その結果,定量PCRシステムにおいても,起源クリプト藻を感度良く正確に求めることが可能であることを確認した.ただし定量PCR法で求めたクリプト藻の出現ピークは,FISH法のそれよりも若干遅れる傾向が見られた.これはクリプト藻を取り込んだ他の原生生物,おそらく微小繊毛虫などを捉えているものと考えられた.
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