Research Abstract |
土壌のホメオスタシス機能,すなわち,恒常性機能あるいは平衡維持機能は,土壌が示す物理的,化学的,生物的緩衝作用によって発現する。したがって,土壌のホメオスタシス機能を回復することは,重要な環境保全戦略となりうる。本研究は,土壌が本来有しているホメオスタシス機能を最大限に引き出すことによる環境保全戦略を創出することを目的とした。そのために,土壌のホメオスタシス機能として,(1)水循環恒常性機能,(2)炭素循環恒常性機能,(3)熱的恒常性機能に着目し,既存知識を整理し,現状分析,問題点の抽出こホメオスタシス機能回復戦略の提示を行うこととし,また,土壌のホメオスタシス機能に依拠した汚染土壌の浄化と修復の戦略の提示を目指した。 平成19年度において,研究代表者宮崎毅は全体を統括し,特に,水循環恒常性機能,炭素循環恒常性機能の研究を推進した。分担者西村拓は,研究全体にわたり現地調査,実験,解析を担当し,特に,土壤の熱インパクトに対する恒常性機能を中心的に推進した。分担者関勝寿は,前年度に引き続き微生物が関与する恒賞性維持機能を担当した。水循環恒常性機能では,少量の降雨により地下水位が著しく上昇する現象が,半乾燥地の塩類集積に大きな影響を与える問題についてモデル実験を行い,中国東北部に広がる塩類集積現象との関連性を検討した。炭素循環恒常性機能では,土壤水分,土壤深さ,地温,降雨などがC02ガス放出に及ぼす影響を実証し,新規性のある知見を得,学会発表,論文公表への準備を進めた。熱的恒常性機能では,インドネシア熱帯雨林の森林火災に着目し,火災による熱環境下での土壌の恒常性維持機能について,揮発した水蒸気,炭素,窒素などの移動について,特異な現象が現れることについて新たな知見を得,その研究の更なる深化の必要性を把握した。
|