2005 Fiscal Year Annual Research Report
イヌの肺における浮遊粒子状物質(SPM)の蓄積:SPMによる生体への影響
Project/Area Number |
17380188
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
島田 章則 鳥取大学, 農学部, 教授 (20216055)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 裕久 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究領域, 領域長 (60281698)
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Keywords | SPM / 大気汚染 / 吸入毒性 / 黄砂 |
Research Abstract |
自然例および実験例を用いて浮遊粒子状物質(Suspended particulate matter、以下SPM)の生体への影響を詳細に解析する計画のうち、本年度は、自然例のイヌの呼吸器の病理学的・生化学的解析を実施し、SPMの生体への影響、影響の発生機序を検討した。また、マウスを用いた動物実験も実施した(黄砂粒子曝露実験)。 1.イヌの肺の解析:老齢犬11症例(7.6〜20歳齢) 全ての症例の肺において気腫性変化、線維化、気管支軟骨の石灰化、および黒色粒子(浮遊粒子状物質)の沈着が認められた。また、これらの形態学的変化は肺葉16箇所全てに観察された。線維化巣では著明なコラーゲンの増生、基底膜の断片化およびエラスチン陽性所見の減少が認められた。組織学的に正常様の部位でも、電顕検索により、コラーゲン線維の増加および基底膜の肥厚が認められた。また、若齢犬と比較して老齢犬の肺において細胞外基質分解酵素(MMP-2、MMP-9)の陽性所見の増強が認められた。 2.黄砂粒子曝露実験 ICRマウス(10週齢、雌)に生理食塩水に懸濁した黄砂粒子(中国砂漠系標準試料CJ-1)50,200,800,3000μg(オートクレーブ処理)を気管内投与し、2時間後および24時間後に安楽殺を行なった。その結果、(1)黄砂投与2時間後にBALFの総タンパク濃度の上昇が認められた。黄砂投与24時間後にBALF総細胞に対する好中球および死細胞の割合の増加が認められた。(2)黄砂粒子による肺組織の破壊が見られ、粒子周囲の気管支上皮細胞および肺胞上皮細胞は変性していた。肺胞腔および肺胞壁において肺胞マクロファージおよび好中球を主体とした炎症性細胞の濔慢性浸潤が見られた。炎症の程度は2時間後より24時間後の方が強かった。(3)電子顕微鏡学的検索:黄砂粒子の付着が見られたI型肺胞上皮細胞の変性性変化が認められた。
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