2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞表面糖鎖を指標とする進化論的ならびに分化論的細胞分類
Project/Area Number |
17390012
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
掛樋 一晃 近畿大学, 薬学部, 教授 (30101405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 充弘 近畿大学, 薬学部, 助手 (40330279)
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Keywords | グライコフォーム / N結合型糖鎖 / 遊離糖鎖 / 胃癌 |
Research Abstract |
細胞機能における糖鎖の役割を明らかにするためには、複合糖質の総和であるグライコームの解析を可能にする方法により糖鎖を網羅的に解析する必要がある。しかしながら、細胞表面に発現する糖鎖は多種多様であり、糖鎖の網羅解析の達成は容易ではない。我々は、本研究の初年度(平成17年度)にセロトニンアフィニティークロマトグラフィーと順相分配型アミノカラムを用いるHPLCを組み合わせてN-結合型糖鎖を網羅的に分離し、細胞表面の発現糖鎖プロファイリングを行う方法を開発した。本年度は開発した技術を利用して細胞表面のN結合型糖鎖のプロファイリングを継続して行ってきたが、その過程で幾つかの細胞においてN結合型糖鎖由来の糖鎖が遊離型糖鎖として大量に蓄積していることを見出した。特に、ヒト由来低分化型胃癌細胞MKN45および高分化型胃癌細胞MKN7では複合型のN結合型糖鎖由来と考えられる遊離糖鎖が大量に観察された。両細胞中に観察された遊離糖鎖を解析すると、MKN45ではNeuAcα2-6Galβ1-4GlcNAcβ1-3Manβ1-4GlcNAcの配列を持つ遊離糖鎖が全遊離糖鎖の約90%を占めた。一方、MKN7はMKN45に比べ遊離糖鎖の含量が高く、複合型のN結合型糖鎖由来と考えられる多種多様な糖鎖が観察された。また、MKN45の細胞内における遊離糖鎖の局在を調べたところ、リソソームと細胞質のいずれにも遊離糖鎖が観察されたが、リソソームに局在するはずの酵素活性が細胞質においても検出されたことから、胃癌細胞における遊離糖鎖の蓄積はリソソームの機能不全が原因であると考えられた。ゴーシェ病など糖鎖分解不全による糖鎖の蓄積を原因とする疾患が幾つか知られているが、MKN45およびMKN7で観察された遊離糖鎖の蓄積と胃癌の分化あるいは悪性度との関係についても興味が持たれる。
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Research Products
(6 results)