Research Abstract |
前年度までの研究で検出率の高かったパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびパーフルオロオクタン酸(PFOA)について,母乳の分析法を構築し,実試料分析へと適用した。母体血中濃度との相関性を確認したところ,臍帯血への移行と同様の傾向が見られた(H17年度研究)。すなわち,回帰式は一次方程式を示し,PFOSではy=0.0084x+0.0168(r=0.84),PFOAではy=0.0325x+0.0075(r=0.87)となった。母乳中においても,PFOSよりもPFOAの移行率がより高いと考えられた。これらの結果よりPFCsは母体血から臍帯血および母乳中に一定の割合で移行し,子どもへと暴露している示唆された。さらに,母乳栄養による乳児のPFCs暴露量を推定した。母乳量や授乳期間は論文を参考に設定した。具体的には,授乳期間は1年間,一日の母乳摂取量は26週までを800mL,27週から39週までを500mL,40週以降を400mLと仮定している。その結果,母乳栄養による乳児のPFCs暴露量は,PFOSで約15μg,PFOAでは約20μg程度であると推定された。他方,臍帯血中のPFCs濃度から,新生児の血液中に含まれるPFCsの総量を母乳中と比較したところ,母乳栄養中に分泌されるPFCsの量がより多いと考えられた。母乳中のPFCs濃度は,臍帯血中の濃度と比較するとごく微量であるが,母乳は乳児が大量に摂取するものであることから,乳児は,母乳栄養により臍帯血を経由した暴露よりも多くのPFCsを暴露している可能性が示唆された。これらのことから,母体から子どもへの移行によるPFCs暴露を評価するためには,臍帯血だけでなく,母乳によるPFCs暴露についても考慮する必要があると考えられる。
|