2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクターピロリCagAを起点とした胃における組織障害発症機構の解明
Project/Area Number |
17390087
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
東 秀明 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (20311227)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 胃がん / 感染症 / チロシンリン酸化 / 転写因子 |
Research Abstract |
1.CagAは転写因子NFATを活性化する(Yokoyama, Proc. Nat1. Acad. Sci. USA. 2005)。CagAによるNFAT活性化機構を検討し、細胞内に侵入したCagAはEPIYA繰り返し領域依存的に細胞内カルシウム濃度を恒常的に増加させ、その結果NFATを活性化していることを明らかにした。 2.細胞内に侵入したCagAはEカドヘリンと相互作用することにより、βカテニンの核内移行を促進し転写活性を増加させていることを明らかにした。またCagAは、βカテニンの活性化を介してp21Cip1、Cdx1の発現量を増加させ、胃粘膜上皮の腸上皮化性化に関わると推察される細胞分化誘導を促進していることを示した。 3.CagAは細胞内において多量体を形成する(Higashi, Proc. Nat1. Acad. Sci. USA., 2002)。種々の変異型CagA分子を用いた解析から、CagA多量体形成に必要とされる16アミノ酸からなるCagA多量体化モチーフを明らかにした。また、チロシンホスファターゼSHP-2活性に依存した細胞運動能および細胞形態に影響を及ぼすCagA生物活性の発現には、多量体形成が必要であることを明らかにした。 4.臨床検体から単離されたピロリ菌に由来したCagA分子多型に基づいた一連の人工改変分子間の細胞内標的分子との複合体形成能を比較検討した。その結果、EPIYAサイトの数および組み合わせに依存して、細胞内シグナル伝達系の脱制御に関わるCagA生物活性が変動することを明らかにした。 5.胃上皮におけるCagAの発癌作用およびその発症機構を解明するため、cagAトランスジェニックマウスの作成を試み複数の系統樹立に成功した。cagAトランスジェニックマウスにおいて増殖性のフェノタイプが確認されており、現在長期経過観察中である。
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Research Products
(5 results)