2006 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化窒素(NO)によるゲノム修飾と制御の分子基盤の解明に向けた研究
Project/Area Number |
17390097
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
赤池 孝章 熊本大学, 大学院医学薬学研究部, 教授 (20231798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有本 博一 東北大学, 大学院生命科学研究科, 教授 (60262789)
澤 智裕 熊本大学, 大学院医学薬学研究部, 助教 (30284756)
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Keywords | NO / 炎症 / 発がん / ニトロ化ストレス / DNA損傷 / 遺伝子変異 / ゲノム |
Research Abstract |
昨年度までに、NO依存性の修飾塩基である8-ニトログアニン誘導体(8-NGs)を化学合成し、それを抗原エピトープとして、モノクローナル抗体を作製した。また、得られた抗体を用いて免疫アフィニティーカラムを作製し、生体検体より8-NG誘導体を分離、電気化学検出器(ECD)を用いたHPLCシステムにて特異的に検出するシステムを開発した。そこで本年度は、この抗体類および分析システムをヒト検体での8-NGs検出への応用を試みた。ヒト尿を分析した結果、喫煙者の尿中に有意に高濃度の8-NGを検出した。また、ヒト肺組織における8-NGs生成を免疫組織化学的に解析した。その結果、高頻度に肺がんを合併する特発性肺線維症(IPF)患者の肺組織おいて、強い8-NGの生成を、特に線維化巣を被覆する再生上皮の細胞質に認めた。気道上皮領域に対する8-NG陽性領域の割合を解析した結果、IPFや肺扁平上皮癌組織においては、正常者に比べ、著明かつ有意に8-NGの生成が促進しており、ニトロ化ストレスが亢進している可能性が示唆された。また、興味深いことに、肺扁平上皮癌組織の免疫染色にて、8-NG染色の局在は、細胞質のみならず細胞核にも有意に認められた。このことは、癌組織においては、核のDNAも損傷を受けていることを示唆している。また、iNOS、内皮型NO合成酵素(eNOS)の生成を細胞質に、さらに、p53とPCNAの発現を核に認めた。以上の結果、肺局所で、NOの過剰産生が惹起され、DNAやRNA、ヌクレオチドプールにニトロ化ストレスを及ぼし、8-NGを生じているものと考えられる。この8-NGの生成が、遺伝子変異を誘発し、IPFにおける肺がんへの進展に寄与しているものと考えられる。今後は、炎症関連病態におけるグアニンニトロ化およびその修復システムを、モデル動物(ウイルス感染など)を含めた生体試料を用いてより詳細に解析し、NOによるゲノム修飾と制御の分子基盤の解明に向けた研究を進める。
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Research Products
(11 results)