2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体バリアとヒト疾患-細胞間隙における分子通過機構の機能分子病理学
Project/Area Number |
17390117
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小山内 誠 札幌医科大学, 医学部, 講師 (60381266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小島 隆 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (30260764)
千葉 英樹 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (00295346)
飛岡 弘敏 札幌医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90291559)
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Keywords | タイト結合 / オクルジン / クローディン / レチノイン酸 / HNF-4α / グリア細胞 / 糖尿病網膜症 |
Research Abstract |
本研究室では、タイト結合の分子制御機構を明らかにし、種々の疾患の病態解明を目指し研究している。上皮や内皮細胞におけるタイト結合は、静的な細胞間接着構造と考えられてきたが、最近の研究から、細胞内外の刺激受容やシグナル伝達の足場である可能性が示唆されている。実際我々は、癌の脱分化により進行性に減少するタイト結合構成蛋白オクルジンが、細胞死や老化機構を修飾し、造腫瘍性を制御することを確認した。また、オクルジンの細胞外ドメインに対する単クローン抗体を作製し、Apical側蛋白の局在を調節するオクルジンの機能的役割を明らかにした。一方、ビタミンAの生理活性体であるレチノイン酸は、タイト結合のバリア機能を調節し、タイト結合の破綻を特徴とするマウス腸炎に対し有効であることを報告した。さらに、タイト結合の形成とその機能維持に重要な核内転写因子であるHNF-4αが、上皮細胞における微絨毛形成のモルフォゲンであるとの位置づけを確立した。タイト結合の形成にはクローディンと呼ばれる20個以上よりなる遺伝子ファミリーが必須であるが、動物組織を用いた組織学的検討から、臓器特異的なクローディンの発現パターンを明らかにし、臓器特有のバリア調節機構の全貌解明に向けての基盤的情報を得た。本研究室では、以前より網膜における特異的な組織構築に着目し、グリア細胞由来のサイトカインが、網膜血管の透過性を調節している可能性を提案してきた。この概念を発展させ、レチノイン酸を用いたグリア細胞の形質修飾により、糖尿病網膜症の初期状態で起こる血管透過性の亢進を抑制することに成功した。これは、糖尿病網膜症の原因を一元的にVEGFに求める従来の概念とは一線を画し、糖尿病網膜症に対する新しい予防および治療法を開発する基礎的概念となり得る。これらのタイト結合研究は、組織診断における分子マーカーの開発のみならず、分子標的治療の開発に寄与すると確信する。
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Research Products
(24 results)