2006 Fiscal Year Annual Research Report
SARSコロナウイルス細胞侵入の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
17390138
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
田口 文広 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 室長 (30107429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 州徳 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 研究員 (90373399)
中垣 慶子 国立精神神経センター, 神経研究所・モデル動物開発部, 流動研究員 (30421829)
森川 茂 国立感染症研究所, ウイルス第1部, 室長 (00167686)
石井 浩二 国立感染症研究所, ウイルス第2部, 主任研究官 (40280763)
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Keywords | SARS-CoV / S蛋白 / プロテアーゼ / 細胞侵入 / pseudotype / エンドゾーム |
Research Abstract |
SARS-CoVは、通常その受容体angiotensin-converting enzyme2(ACE2)に結合後、エンドゾームに輸送され、cathepsin-Lなどのプロテアーゼによりスパイク(S)蛋白の膜融合能が活性化され、細胞侵入するというエンドゾーム経路で細胞内へ侵入すると考えられている。一方、我々は外来性のプロテアーゼが存在する場合、細胞表面から侵入する可能性を提唱した。この細胞表面からの侵入は、ACE2結合したスパイク(S)蛋白がプロテアーゼにより解裂され、膜融合活性を獲得するために可能になると考えられている。本研究では、この仮説を検証するため、解裂性S蛋白を持つpseudotypeウイルスを用いて、細胞表面からの侵入が可能か否かに付いて検討した。他のコロナウイルス解裂性S蛋白との比較から、SARS-CoVS蛋白上の細胞内プロテアーゼ(フリン)により解裂が予想される3か所にプロテアーゼ認識アミノ酸配列を導入した変異S蛋白を作成した。このS蛋白をenvelope上に持つ水泡生口内炎ウイルス(VSV)のpseudotypeウイルスを作成し、その細胞侵入経路を検討した。3か所の変異挿入部位の中で、S蛋白797/798で解裂が起こるよう設計されたS蛋白は、細胞融合性を示し、pseudotype envelope上に発現された。このpseudotypeは、SARS-CoV非解裂性S蛋白を持つpseudotypeと比べ、エンドゾーム経由感染阻止薬による感染抑制はなく、また、SARS-CoVがエンドゾーム内で活性化されるプロテアーゼ阻害剤の影響も低かった。以上の結果から、解裂性S蛋白を持つpseudotypeは細胞表面から侵入することが強く示唆された。即ち、SARS-CoVはプロテアーゼの存在下で直接細胞膜から細胞侵入する能力を有することが確認された。
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Research Products
(6 results)