2006 Fiscal Year Annual Research Report
抗リン脂質抗体の病原性:プロテオミクスの手法を用いた分子生物学的解析
Project/Area Number |
17390286
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 隆夫 北海道大学, 大学院医学研究科, 教授 (80146795)
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Keywords | 免疫学 / プロテオーム / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome:以下APS)はβ_2グリコプロテイン1(以下β_2GPI)依存性抗カルジオリピン抗体(以下抗CL/β_2GPI抗体)をはじめとする抗リン脂質抗体と総称される一群の自己抗体が引き起こす自己免疫性血栓性疾患である。血管内皮細胞や単球系細胞に直接作用し、凝固のイニシエーターである組織因子(tissue factor:以下TF)を細胞表面に発現し凝固系を活性化することにより、易血栓性が誘導されることが知られている。抗リン脂質抗体の主要な対応抗原として、β_2GPIやプロトロンビン等の、リン脂質に結合した凝固・線溶を制御するタンパクがあげられるが、抗体が結合した後の細胞刺激シグナルについては明らかにされていない点が多く、我々は、抗リン脂質抗体による細胞刺激シグナルについて検討を行った。末梢血単核球(PBMC)および単球系細胞株において、ヒトモノクローナル抗CL/β2GPI抗体での刺激によりp38 MAPKのリン酸化が上昇し,NF-κBの活性化をひきおこし、TFが発現することを認めた。また、マウス単球細胞株RAW264.7を用いてβ2GPI関連プロテオームを分離し、ESI-LC-MS/MSにより解析したところ、複数のタンパク質が同定された。候補の細胞膜タンパク質の中で、ゲルゾリンがβ2GPIと結合していることがウエスタンブロッティング法にて確認された。また、フローサイトメーターによりゲルゾリンが細胞膜表面上でインテグリンα5β1と結合することが確認され、さらにβ2GPIがゲルゾリン、インテグリンα5β1を含む複合体と結合することが確認された。また、ルシフェラーゼアッセイにより、抗インテグリン抗体によるインテグリンα5β1阻害により、抗CL/β2GPI抗体による細胞刺激シグナルが減弱することが確認された。以上の結果より、p38 MAPK経路は、抗リン脂質抗体刺激による単球からのTF発現に重要な役割を果たしていると考えられ、また、ゲルゾリン,インテグリンα5β1を含む複合体がβ2GPIの細胞膜表面への結合に関与することが想定され,APS患者の血栓向性に対する新たな治療の標的と成り得る可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)