2007 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝性神経変性疾患に対する非侵襲的遺伝子治療法の開発(BBBを越えられるか?)
Project/Area Number |
17390305
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
島田 隆 Nippon Medical School, 大学院・医学研究科, 教授 (20125074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
右田 真 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50256963)
三宅 弘一 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90267211)
塙 秀樹 日本医科大学, 医学部, 助教 (10256977)
渡邊 淳 日本医科大学, 医学部, 助教 (10307952)
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Keywords | 遺伝子治療 / 異染性白質ジストロフィー / 血液脳関門 / マンノース6リン酸 / トランスサイトーシス |
Research Abstract |
Arylsulfatase A(ASA)の欠損症である異染性白質ジストロフィー(MLD)をモデルとして、遺伝性脳神経変性疾患に対する新しい非侵襲的遺伝子治療法の開発を目的としている。リソゾーム酵素欠損症では、一般的に酵素補充療法の有効性が期待できるが神経変性を伴う疾患に対しては血液脳関門(BBB)が障害となり、有効な治療戦略が立てられていない。ウイルスベクターを脳内に注射する侵襲的遺伝子治療は、ヒトへの治療法としては技術的にも倫理的にも問題がある。本研究では、BBBを構成する血管内皮細胞でリソゾーム酵素のレセプターであるマンノース-6-リン酸受容体(M6PR)を強制発現させ、リソゾーム酵素を血中から神経組織に非侵襲的に輸送させる方法(Transcytosis)の可能性を検討している。肝臓や筋肉での正常リソゾーム酵素の発現と組み合わせることにより、脳神経組織に対する長期の酵素補充療法が実現できると期待している。 ヒト胎盤RNAライブラリーから7.6kbのM6PR遺伝子のPCRクローニングし、insulin-like growth factor II receptor(IGFIIR)機能を欠損させた4.8kbのminigeneの作製に成功した。Minigeneを組み込んだレンチウイルスベクターを感染させたHUVEC細胞ではASAを効率良く取り込むことを示した。ラットBBBin vitro検定モデル(Pharmaco-cell)にレンチウイルスベクターを感染させたところ、M6PRminigeneの発現とASAの細胞内への取り込みが確認された。しかしASAのBBBの特異的通過は確認できなかった。M6PRminigeneの代わりにGFPを発現させたBBBでもASAが通過していることからウイルスベクターの感染によりBBBモデルが傷害を受けたことが考えられた。現在、BBBモデルを使った実験を繰り返すとともに、動物実験も開始している。マウスの脳内にレンチウイルスベクターを定位脳手術法で脳内に注入し、その後血管内に投与したASAの組織分布を調べている。 具体的な研究成果については特許出願との関係から見合わせる。
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