2005 Fiscal Year Annual Research Report
fMRIと探索眼球運動の同時記録を用いた統合失調症の情動認知障害の脳内病態の解明
Project/Area Number |
17390322
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
前田 久雄 久留米大学, 医学部, 教授 (60089919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 喜一郎 久留米大学, 高次脳疾患研究所, 教授 (20140642)
小路 純央 久留米大学, 医学部, 助手 (50343695)
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 |
Research Abstract |
統合失調症では表情認知機能や情動機能が障害されているとされている。今回、我々は、研究費補助金により統合失調症者の、「泣き」や「笑い」写真時の脳内病態をfunctional MRI (fMRI)と探索眼球運動を用いて健常者と比較検討した。本研究に先立ち、総ての被験者に本研究の主旨を書面にて説明し同意を得た。なお、当研究は、久留米大学倫理委員会の承認を得ている。 脳画像測定方法は、1.5TのMRIスキャナー用いた。被験者にはMRIスキャナーの中に臥床してもらいヘッドフォンをした状態で、顔面上方に設置した鏡を通してスクリーンを見てもらうようにした。MRI画は、SPM2を用いて解析した。健常群は、「泣き」写真では扁桃体に賦活が観察されが、「笑い」写真負荷状態では扁桃体の賦活は観察されなかった。統合失調症群では、「泣き」写真および「笑い」写真で扁桃体に賦活が観察された。この結果は、健常者には快刺激である「笑い」を統合失調症者は不快刺激と認知している可能性が示唆され、この扁桃体の不適切(ミスマッチ)な賦活が統合失調症者に指摘されている情動認知の障害の原因もしくは結果である可能性が強く考えられた。情動関連探索眼球運動においては、健常者群では、陰性感情「悲しみ;泣き」喚起に対する探索眼球運動が陽性感情「楽しい:笑い」喚起により、適切(マッチした)な探索眼球運動反応が生じ、陰性情動反応が陽性情動反応へとスイッチし探索眼球運動は回復した。しかし、統合失調症者群は、「悲しみ」に対する情動反応が持続し、陽性感情「笑い」喚起により、不適切(ミスマッチした)な「笑い」情動反応が生じ探索眼球運動は回復しなかった。これらの結果から、情動機能を認知機能の一部と考えれば、統合失調症者は情動に関連した認知機能に障害が存在すると考える。今後、科学研究費によりfMRIと探索眼球運動との同時記録を試みていく。
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Research Products
(5 results)