Research Abstract |
昨年度までにミニブタの前脈絡叢動脈の閉塞による白質脳梗塞モデルを開発し,その病理学的評価とmotor evoked potential(MEP)を用いた電気生理学的評価を行った。その結果,このモデルがreproducibleで安定したモデルであることと,電気生理学的には6分程度で変化がみられるが,不可逆的な梗塞の発生までには15分程度の猶予があること,病理学的には梗塞巣は初期には空胞形成と浮腫で始まり,その範囲が拡大してmacrophageが集簇し,瘢痕を形成することを発見した。以上の知見をStroke誌に発表した。 ミニブタでは前脈絡動脈の閉塞により脳梗塞を発生させることができたが,これを齧歯類で作成することが可能であれば,蛋白レベルや遺伝子レベルでの解析も可能となり,汎用性が広がり研究の推進が容易になる。2006年に他施設からラットを用いた白質梗塞のモデルが報告されたので,これが再現可能か検証した。糸を使用した脳梗塞モデルは不安定である可能性が強く(報告あり),また,薬物投与による白質損傷も,実際の脳梗塞を反映しない可能性が高いために,開頭手術による前脈絡動脈の閉塞を試みた。前頭側頭開頭によるアプローチでは,皮膚,軟部組織,脳に対するダメージが強くなったため,錐体骨経由のアプローチに変更して行った。具体的な方法としては,耳介後部に縦切開を入れ,錐体骨を部分的に削除して,海綿静脈洞部後側方より侵入し,内頚動脈を確認したのちに,前脈絡叢動脈をクリップするものである。24時間後の組織切片より,白質のみに梗塞が生じることが確認され,白質梗塞モデルが可能であると考えられたが,モデル作成時の出血,脳損傷が生じる確率が高く,再現性の高い安定した脳梗塞モデルを確立するまでには至らなかった。
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