2006 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオーム解析を用いた口腔癌の分子標的の探索とそのオーダーメード医療への応用
Project/Area Number |
17390539
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡本 哲治 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (00169153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
虎谷 茂昭 広島大学, 病院・講師 (90172220)
林堂 安貴 広島大学, 病院・講師 (70243251)
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / MICA / 口腔癌疾患感受性 / 超選択的動注療法 / 細胞治療 / プロテオーム解析 / DNAマイクロアレイ / HBp17 / FGFBP |
Research Abstract |
口腔癌に対して,NK/LAK細胞治療,化学療法,ビタミンA併用群は高い治療効果を示した。そこで,2次元電気泳動およびMALDI-TOFMSを用いたプロテオーム解析にてビタミンAにより誘導される細胞膜蛋白群を分離・同定した。その結果、NK細胞活性化受容体NKG2Dのリガンド、Major histocompatibility complex class I chain-related molecule A (MICA)を同定した。MICAは、ほとんどの正常細胞では発現されず腫瘍細胞にのみ発現されている。癌細胞がMICAを発現しているにもかかわらず、免疫細胞によって癌細胞が排除されない免疫回避システムの一つとして可溶性MICA (sMICA)が考えられている。前年度の研究において、口腔扁平上皮癌(OSCC)の疾患感受性,血清sMICA濃度とOSCCの進展度および治療経過との関連性を検討し、OSCC患者の血清sMICA濃度は健常人のそれと比較して有意に高く、癌の進展、再発や転移に伴い上昇することを明らかにした。また、TGF-βは免疫抑制性に作用しNKG2Dの発現を抑制することが報告されており、細胞外マトリックス蛋白の産生と分解、接着分子の調節などを通して生理的な細胞の再生や創傷治癒、炎症・免疫反応などを調節している。したがって、sMICAの産生に関与している可能性が考えられる。 本年度は、MICAとOSCC病態との関連性を明らかにするために、OSCC組織におけるMICA発現と臨床像との関連性ついて検討しさらにTGF-βによるMICAおよびsMICA蛋白の発現調節機構を検討した。 OSCC組織におけるMICA発現を免疫組織化学的に検討し、OSCC患者の血清sMICA濃度をELISA法にて測定した結果、発現強度に差はあるものの、全OSCC癌細胞はMICA蛋白を発現していた。MMPを高発現している浸潤領域の癌細胞ではMICAの発現が認められなかった。進展症例では細胞表面のMICA発現は低下し、間質組織でのMICA発現が上昇していた。OSCC患者の血清sMICA濃度は、癌の進展、再発や転移に伴い上昇した。TGF-β1/2により培養上清中へのsMICAの産生は上昇し、細胞表面MICA発現は抑制された。一方、TGF-β1/2siRNA導入により細胞表面MICA蛋白の発現は上昇し、培養上清中へのsMICA産生は著しく抑制された。また、TGF-β1/2によりMMP-2,-3,-8,-9mRNA発現の上昇を認め、MMP阻害剤により、細胞表面MICA蛋白の発現は上昇し、sMICAの産生は抑制された。以上の結果から、血清sMICA濃度は臨床病態と関連していたこと、また細胞表面のMICA発現は抗癌治療効果と相関していたことから、MICAは新たな分子標的抗原として有用であると考えられた。また、TGF-β1/2はMMPを活性化させることで、細胞外領域でのMICA蛋白の切断亢進を介してsMICAの分泌を促進していると考えられ、TGF-βは癌の浸潤転移に関与するのみならず、sMICAの産生を促進し、細胞表面のMICA発現の低下を介してNK細胞活性を抑制することで、癌の浸潤前線における癌の免疫回避機構の獲得に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Research Products
(7 results)