2005 Fiscal Year Annual Research Report
脱北者とその家族の「安住」の模索と国境を越えるネットワークに関する人類学的研究
Project/Area Number |
17401033
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
李 仁子 東北大学, 大学院・教育学研究科, 講師 (80322981)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹田 博通 東北大学, 大学院・教育学研究科, 助教授 (80154011)
|
Keywords | 東アジア / 文化人類学 / 移住 / 在日コリアン / 帰国運動 / 離散家族 / 北朝鮮 / 脱北者 |
Research Abstract |
本年度は、これまでの調査の継続として、韓国における脱北定着者の再教育施設(ハナウォン)でのフィールドワークや、すでに調査に応じてもらっている日韓両国のインフォーマントらの追跡調査によって、安住を模索するなかで新たに人と人との絆が国を越えて再生・構築されていくプロセスを、より多くのケースで跡付けることができた。日本に滞在している脱北者にとって、自分の出自を明かすことができるニューカマーの韓国人ネットワークが彼らの生業にとって重要な役割をしていることが本年度の研究で分かった。さらに、韓国の脱北定着者たちが集住する地域で予備的調査を行い、そこにおいて交差・再編されつつある国境を越えたネットワークに関する調査も研究協力者によって行った。同時に、脱北者を支援する無数のネットワークを提供している様々な宗教団体への聞き取り調査も行っている最中である。 しかし、やり残した課題もある。本年度の研究計画の一つとして、北朝鮮国境付近の中国朝鮮民族自治区内で漂流生活をしている脱北難民のフィールドワークを、主として自治区の中心都市である延辺にて行い、彼らの生活の実情や彼らを支援するネットワークのあり方を調査するとしていた。しかし、脱北者をめぐって中国対日韓の両国が対立することになり、研究調査とはいえ、中国に入り脱北者に接することはかなりの危険を冒すことになるため、断念せざるを得なかった。そのかわり、韓国の宗教団体から報告された中国内の脱北者に関するレポートや、日本や韓国入りを無事されたインフォーマントたちの聞き取り調査を元にその状況を把握することに努めた。 本年度の調査や研究では、脱北者をめぐるさまざまなネットワークに触れ、そのネットワークが彼らの新たな滞在地になる日本や韓国で生活するに当たってどのような意味を持つのかを見ることができた。しかし、日本滞在の脱北者のほとんどは自分の出自を隠して生活する人が多いため公表が難しい。インフォーマントのプライバシーの保護を優先することで、研究発表には時間を要する結果になる。
|