2005 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコ独立記念日の文化人類学的研究-西洋化した非西洋圏社会における20世紀経験
Project/Area Number |
17401035
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
落合 一泰 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (50212337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 紀 千葉大学, 文学部, 助教授 (40282438)
青木 利夫 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40304365)
関 啓子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20107155)
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Keywords | メキシコ / 独立記念日 / ナショナリズム / 国民文化形成 / 首都と地方 / 国旗 / 生涯学習 / メキシコ系米国人チカーノ |
Research Abstract |
平成17年度は、非西洋圏近代社会における20世紀経験の研究という問題意識を基礎に、研究代表者・研究分担者が現地調査による事例的知見を当研究組織に還元し、平成18年度以降の研究計画の一層の深化に向けた基盤形成をめざした。 落合は2度の海外調査を行ない、19世紀なかばにメキシコ独立記念日が9月27日から9月16日へと変更された理由が保守派と自由派の政治闘争の結果だったことを新聞資料研究から確認した。また、1910年のメキシコ革命の痕跡を独立記念日から抹殺する動きが、新自由主義経済政策の導入期の1990年代に始まったという重要な知見を得た。さらに、カリフォルニアのメキシコ系住民がむしろ1862年5月5日の対フランス戦役勝利記念日を盛大に祝うという事実とその歴史過程について知見を得た。 鈴木はユカタン州メリダ市で現地調査を行い、独立をめぐる国民的シンボルと地域的シンボルが競合並存する現状を実態的に解明し、操作されるメキシコ国家主義について事例的知見を得た。 青木は、ハリスコ州歴史文書館において資料調査を行い、国家主導の独立百周年記念祭を村落レベルの住民が巧みに利用し、地域利益を追求した事例を明らかにした。 関は、メキシコシティにおいて小中学校における独立記念日教育プログラムの実態調査と聞き取り調査を行い、独立記念日に先立つ準備過程が小中学校の総合学習に位置づけられ、ナショナリズム醸成という教育的意味機能を強く持つことについて、日本人研究者として初の比較教育学的知見を得るに至った。 本研究組織は平成18年3月29日に全体会議を招集し、現地調査の成果を当研究組織に還元集約した結果、平成18年度の研究計画の先鋭化に向け、「歴史的・文化的・社会的資産として求心的に組織され、しかし多様かつ遠心的に利用される独立記念日」という視座を共有した。
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Research Products
(5 results)