2005 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおける地方政府のガバナンス-開発評議会の機能を中心に
Project/Area Number |
17402010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 謙一 大阪大学, 留学生センター, 助教授 (40237722)
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Keywords | フィリピン / 地方政府 / 1991年地方政府法 / 開発評議会 / 市民社会 / NGO / 市民参加 / 地方分権 |
Research Abstract |
フィリピンの地方分権のあり方を示した1991年地方政府法に規定される開発評議会の実態を見るため、2005年8月〜9月と2006年3月に現地調査を行った。今年度の調査地は、マニラ首都圏内のケソン市と首都圏南部のカビテ州である(ただし、カビテ州については、1回目の調査が現地で政情不安が生じた時期と重なったため、予定していた調査を十分に実施できなかった)。 この両政府を調査対象としたのは以下の理由による。ケソン市は、フィリピンの主要なNGOの多くが本部を置くことからもわかるように、国内でも市民社会の厚みが大きい都市であるにもかかわらず、地方行政への市民参加機関である開発評議会が長らく機能しなかった。2004年にようやく評議会設置の動きが本格化し、今年度に入って具体的に機能し始めた。また、カビテ州は、伝統的に農業地帯であったが、1990年代以降、マニラ首都圏の経済活性化の波を受けて急速に工業化が進んでいる。このような状況下で、伝統的なボス支配の名残を残す地方政府と政治参加への要求を強め始めたNGOなどとの関係が、開発評議会を巡ってどのように展開しているかを見ることができる。 調査では、地方政府、NGO関係者へのインタビューと評議会の視察、関係資料の収集を行った。上述の理由から中心的な調査地としたケソン市については、開発評議会は開催総会が行われた段階であり、実質的に機能するには至っていないことが明らかとなった。この理由としては、法制度上の間題(制度の複雑さに件う関係者の不慣れや年間開催回数の少なさに多様な個別利害を代表するNGOなど評議員間の調整の困難さ、市長のコミットメントの強さの問題などが挙げられようが、開発評議会の市民参加に対する効果についての結論を導くためには、今しばらく推移を観察して、市の具体的な開発事業を討議する段階でどの程度実質的な議論になるのかを見る必要がある。
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