2007 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおける地方政府のガバナンス-開発評議会の機能を中心に
Project/Area Number |
17402010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 謙一 Osaka University, 留学生センター, 准教授 (40237722)
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Keywords | フィリピン / 地方開発評議会 / NGO / 地方自治 / 1991年地方政府法 / ケソン市 / カビテ州 |
Research Abstract |
マニラ首都圏のケソン市では、1991年地方政府法施行から10年余り経て、同法によって規定された地方開発評議会が本格的に機能しはじめた。開発評議会では2005年頃から同市の開発事業をめぐって継続的に議論が行われていた。そして、一部の開発事業を提案した決議が同市市長に提出されるに至った。評議会に参加したNGOの間では、評議会が地方自治への市民参加を促進するとの一定の期待もあった。しかしながら、評議会は最終的にケソン市の開発事業計画をまとめ上げることができず、同市予算案にも反映されない状態が続いた。その結果、2007年選挙後に新たな評議会立ち上げのために行われたNGOの募集に応じたのは、それまで評議会に参加していたNGOのうちの一部にとどまっているといわれる。19年度の調査では、評議会立ち上げから開発事業計画の議論が行われるまでの間に見られた熱気と参加者の期待が、最終的に評議会の議論が市の予算に反映されないという結果を受けてしぼんでいった過程の一部を明らかにすることができた。 カビテ州では、州開発評議会は実質的に運営されておらず、他方で、国際援助機関からの援助をうけた州政府主導の環境管理事業がNGOの参加も得て進められている。この事業は地方政府の国際的ネットワークの中で、参加アクターの国境を越えた相互学習の過程を踏みつつ進められているが、NGOの実質的参加という点で問題を残している。その要因として19年度の調査により明らかにされたことは、カビテ州の政治的不安定性、NGOと州政府ほかの参加アクターの間の相互不信、事業進展の核心的ポイントがNGOが不得手とする政治的駆け引きにあること等であった。
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