2008 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおける地方政治のガバナンス-開発評議会の機能を中心に
Project/Area Number |
17402010
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 謙一 Osaka University, 留学生センター, 准教授 (40237722)
|
Keywords | フィリピン / 地方開発評議会 / 1991年地方政府法 / 地方分権 / 市民社会 / NGO |
Research Abstract |
マニラ首都圏のケソン市で運営されていた市開発評議会については、2007年までの期間に同評議会が市の開発計画および投資計画についての決議を作成できなかったことを確認した。その要因としては、評議会委員が、評議会は市全体に裨益する事業についての議決の場であるということを理解せずに、各種委員会の運営がスムーズにいかなかったこと、また、自らが推進したいと考える個別の事業を開発計画に盛り込むことを主張する傾向が強く、総意をもって計画をまとめられなかったことがある。また、市長は、市民社会の参加には一定の理解を示しているものの、NGOを含めた市民については、市(あるいは市長)の推進する計画についての情報を受け身的に知らされて、それに賛同するべき存在であるといったイメージを抱いている。したがって、ケソン市において市民の能動的参加にもとづく開発計画作成が実現するためには超えなければならない課題がまだ残されていると結論づけられた。 また、カビテ州については、昨年度同様、国際援助機関の援助を受けて州政府が主導する沿岸環境管理事業が進められているが、NGOの積極的な参加は引き続き見られず、また、沿岸環境汚染要因とされる海中に設置された漁網の撤去をめぐっては、漁網所有者(その中には地元の零細漁民も多くいる)への事前周知が不十分であるなど、住民参加を十分に得ないまま事業が推進されていた。 フィリピンの市民社会および地方分権化に関する議論を整理した。市民社会と政府との関係、市民社会内部の問題を指摘し、90年代以降の地方分権の特徴と問題点を整理した。
|