Research Abstract |
昨年度に引き続き,大気汚染物質発生源である乾燥炉内,作業所,周辺の天然ゴム林,都市部および郊外に全粒子サンプラーを設置しフィルタ上に粒子捕集を行うと共に,粒子径別サンプルをナノ粒子サンプラーで採取し,発生源情報を収集した。サンプリングは,ソンクラ県ハジャイ周辺を中心にして年間を通じて継続的に行った。サンプルの分析項目は,全粒子濃度,粒子径別濃度,炭素成分,多環芳香族炭化水素(PAHs)等の成分であり,すべて現有の分析装置を使用した。 今年度は,特にRSSの製造・輸送・ゴム製品製造・消費の一連のプロセスで排出される大気汚染物質の排出量に着目し,上記で得たRSS製造時の発生源情報,既往の研究や環境情報データベースからの汚染物質発生量原単位などを用いて,各段階におけるCO2, NOx,多環芳香族化合物(以下PAHs)排出量を推定した。製造・輸送プロセスを通した汚染物質の排出量を推定した結果,古木燃焼時のPAHs排出が全体の9割近くと卓越する一方で,日本国内のゴムタイヤ製造プロセスでの排出は相対的に少ないことと推測された。RSS製造からタイヤ製造に至るまでの過程に限れば,総PAHs排出量に占める古木燃焼の寄与は非常に大きいと推定されるが,正確な議論を行うためには,船舶を含めたより多くの排出データの蓄積が必要と考えられる。 RSS製造過程からの粒子発生機構を把握するため,日本およびタイで天然ゴム古木の燃焼実験を行うための装置を準備し,次年度に模擬燃焼実験を行う準備を整えた。
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