2005 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯雨林の着生植物とアリの共生系が林冠の生物群集にあたえる影響
Project/Area Number |
17405006
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市岡 孝朗 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (40252283)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 陽子 大阪教育大学, 教育学部, 助手 (10343261)
|
Keywords | アリ類群集 / 熱帯雨林 / 着生植物 / 林冠生物学 / ボルネオ島 / 東南アジア / フタバガキ混交林 / 群集生態学 |
Research Abstract |
熱帯雨林の林冠部にみられる多様で現存量の多い着生植物群がアリの群集構造にあたえる影響を調べるために、まず、東南アジア熱帯の中心部に位置するボルネオ島の低地フタバガキ混交林において、林冠を構成する突出木や高木(林冠木)上のアリ類の種構成と採餌行動圏、巣場所の分布、および、着生植物の分布を調査した。その結果、アリ類の種数、コロニー数は樹木の葉層が集中する樹冠部でもっとも多くなり、太い枝や幹の部分では、高さに関わりなくそれらの値が低くなった。また、樹冠部にみられるアリ種の多くでは、行動圏が小さく、出現頻度が低いという傾向をしめすが、幹部にみられるアリ種はコロニーサイズが大きくて行動圏が広くて出現頻度が高くなるという傾向がみられた。アリ種によって樹内の利用部位は異なっており、大半の種類が樹冠部、地上から離れた幹部、地上付近の幹部のいずれかの場所内だけに採餌行動圏と巣の両方を保持していた。樹上にみられるアリ種の多くは、枯死や穿孔虫などによって生じた細い枝にある空洞部や着生植物の根元に形成される腐食層(いわゆる空中土壌)中、あるいは、アリ植物化した着生植物の空洞部に巣を設営していた。大きな空洞部をもつ着生アリ植物内や太い枝や幹に形成された比較的広い空洞部内に営巣するいくつかのアリ類は、大きなコロニーサイズをもって広い樹上空間を占有する傾向があり、これらのアリが生息する樹木では、生息するアリ類の総種数が減るとともに、樹冠部のアリ類の行動圏が狭められ、採餌のために地上から樹上に訪れるアリ類の活動が制限をうけた。以上のことから、熱帯雨林の林冠部においては、アリ種間で採餌行動圏や巣場所のための空間資源をめぐって競争がはたらいており、着生植物などの、巣場所として利用可能な小空間の存在様式が樹上のアリ類の群集構造に大きな影響をあたえることが示唆された。
|