2007 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯雨林の着生植物とアリの共生系が林冠の生物群集にあたえる影響
Project/Area Number |
17405006
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市岡 孝朗 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 准教授 (40252283)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 陽子 大阪教育大学, 教育学部, 助教 (10343261)
|
Keywords | アリ類群集 / 東南アジア熱帯 / 生物間相互作用 / 着生植物 / 植食性昆虫 / 熱帯雨林 / つる植物 / アリ植物 |
Research Abstract |
これまでの熱帯林の林冠部における野外調査を続ける一方、2007年度は、熱帯雨林の林冠部において、着生植物やつる植物の樹内空間分布、樹木サイズと樹種、樹木の分枝構造と枯死部分の分布、樹上(空中)土壌の樹内分布などを調べた。また、アリの採餌空間および巣場所の林冠木での樹上分布を詳細に調査した。その結果、アリが林冠部において巣場所として利用できる空間は、枯枝の空洞部、樹皮下の空隙、空中土壌中、アリ植物化した着生植物やつる植物などに限られており、このような巣場所好適空間の樹内分布が、林冠部でのアリ類の空間利用に大きく左右されていることが強く示唆された(成果は投稿後査読審査中)。また、昨年に引き続き、アリ植物となった着生のシダ類に営巣し、林冠部の広い空間になわばりを形成する攻撃性の強いアリ種(シリアゲアリ属の一種)を林冠部の一部の樹上空間から除去した。このアリの除去により、植食性昆虫の食害量が顕著に減少するだけでなく、樹冠の表層部(樹内の最上層部・最先端部)に営巣場所と採餌空間をもつアリや、夜間に地上部から樹上へ採餌空間を広げるアリの量・種構成や空間分布が変化した。また、2007年度においては、地表部、林床の低層木、林冠ギャップの低層木上に見られるアリ類相や節足動物相に関する基礎データも収集し、これらのデータを林冠部で得られたデータと比較した。その結果、他の微小環境に比べて、林冠部に生息するアリ類は巣場所に適した空間がより強く不足していること、林冠部ではアリ類の存在量が相対的に多く植食者に対する制御効果がより強調されていることが推定された。これらのことから、着生植物の存在が、林冠構成木の樹上のアリ類相を変化させることを通じて、林冠部の他のアリ種の空間利用様式や、植食性昆虫をはじめとする多様な節足動物相あるいはそれらの量に強い影響を与えていることが示唆された。
|