2006 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の共同繁殖モデルシステムとしてのタンガニイカ湖魚類の繁殖生態の解明
Project/Area Number |
17405010
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
幸田 正典 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70192052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 康裕 日本大学, 経済学部, 教授 (50295383)
宗原 弘幸 北海道大学, 北方圏フィールド科学センター, 助教授 (80212249)
狩野 憲二 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40293005)
渡辺 勝敏 京都大学, 大学院理学研究科, 助教授 (00324955)
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Keywords | 共同繁殖 / シクリッド / 精子競争 / 雌による雄の受精の操作 / 代替繁殖戦術 / 一妻多夫 / 繁殖成功 / 生活史 |
Research Abstract |
昨年度は、本課題研究の大きな目的である魚類の共同繁殖の実態解明を中心に野外調査を行った。協同的一妻多夫魚カリノクロミスの人口学的調査により2タイプの雄の成長,消失率,戦術転換の有無についてほぼ明らかになった。α、β雄ともに成長は遅いが、非繁殖雄の成長は著しく高いことが明らかになった。この結果により,本種の共同繁殖がよりダイナミックに把握できる。また、岩の起伏の少ない新たな調査地において本種の社会を調査した.ここでは,予備調査で示されたとおり、共同繁殖が少なかった。これらの結果から共同繁殖をもたらす生態的要因について今後検討したい。野外において,共同繁殖巣での産卵例をさらに観察し,雌によるα雄・β雄の父性の操作に関する仮説を検証する事例も得た。 協同的一妻多夫鳥類における集団サイズを決める生態的要因についてはいくつかの研究があるが,それら魚類に関してはこれまでまったく研究がない.共同繁殖が確認されている,ジュリドクロミス属魚類で,巣の大きさ、ペアのサイズ、隣接巣からの距離、底質、他種の密度、餌量を検討したところ、巣の大きさが根本的な生態要因であることが示唆された。このことは、巣をめぐり繁殖個体間で競争が生じていることも示唆している。我々が,新たに見いだしているオブスキュルスの共同繁殖の予備的観察を開始することにより,この種の共同繁殖について予備的な研究を行うことができた。血縁判定の結果から、この種でも血縁ヘルパーを伴なう共同繁殖の進化が示唆された。 この他、雄の繁殖多型が知られるテルマトクロミス属のビッタータスでの繁殖生態の研究を行った。本種では繁殖寄生戦術として、スニーカーとパイレーツ雄は昨年も確認され、さらにパイレーツ雄戦術の効果的な繁殖方法について検討した。これらは、非血縁ヘルパーを伴う協同繁殖の進化経路を考える上で重要である。
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Research Products
(6 results)