2006 Fiscal Year Annual Research Report
家畜の過放牧によるモンゴル草原生態系の生物多様性の劣化に関する研究
Project/Area Number |
17405045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高槻 成紀 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (00124595)
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Keywords | ニホンジカ / 繁殖システム / 生涯繁殖成功 / 生命表 / 平均寿命 / なわばり / 遺伝的類似度 |
Research Abstract |
計画に基づきモンゴル草原の生物多様性におよぼす放牧の影響を調査した。 調査値のひとつであるブルガンにおいて、役10年間放牧を禁じた飛行場内とふつうの放牧地で群落調査をし、群落高や組成の違いを示した。ここでは放牧地にCarex sp.が優占するのが特徴であり、この種について詳細な調査をする必要が生じた。 現地のカウンターパートに協力を得て、ヒツジを2群に分け、ひとつでは季節移動させ、もうひとつは定着的に飼育して、体重測定をしたところ、移動型のほうが冬の体重減少が小さい結果が得られた。また季節移動を調べるためにGPS電波発信機を装着したところ、3頭はなんらかのトラブルがありデータがとれなかったが1頭からは移動の奇跡が日3点とれた。これにより季節的な移動と、1日の行動範囲がわかった。季節移動については聞き込みによる情報とずれがあった。2007年3月に発信器を更新したので、その後の移動軌跡も得られる予定である。さらにヒツジ糞を毎月回収したので分析をする予定である。 もうひとつの調査地であるフスタイ国立公園ではおもにシベリアマーモットの調査をおこなった。マーモットはマウンドを形成し、そこにシオガマギク属の特異な群落が形成されることが示された。またマウンドは単調な群落に異質性を与えることが示された。ただし調査範囲のとりかたなどに不備があったので、2007年には改善する予定である。シオガマギクは代表的な虫媒花植物なのでポリネータを誘因するはずであり、このデータを2007年夏にとる予定である。これが完成すれば、マーモットの生態系エンジニアとしてのマウンド形成が虫媒花を生育させ、それが間接的に昆虫の生態系機能を創出するということが示される。 フスタイ国立公園ではこのほかタヒ(野生馬)の行動圏利用を解明するために2006年11月にGPS発信器を装着した。またタヒとアカシカの食性比較をするためにカウンターパートに糞を定期的に回収してもらっている。 家畜と野生草食獣の食性関係について論文を完成させ、印刷中である。またモウコガゼルの研究成果を一般向けに公表した。これらモンゴルの草原生態系の生物多様性についても一般書を上梓した。
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Research Products
(4 results)