2006 Fiscal Year Annual Research Report
計算論・心理学・言語学的手法の統合による比喩の認知過程の解明
Project/Area Number |
17500171
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
内海 彰 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (30251664)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 真樹 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (80302826)
|
Keywords | 認知科学 / 言語学 / 実験系心理学 / 人工知能 / 比喩 / 潜在意味分析(LSA) |
Research Abstract |
平成18年度の研究により得られた成果は以下の通りである. 1.名詞隠喩や形容詞隠喩における意味解釈と表現効果の認知過程の解明 (1)日本語の共感覚メタファーのデータをWebから収集し,感覚間の類似性に基づくもの,共起関係に基づくもの,その両者が合わさった関係に基づくものという写像の基盤の違いに着目した分類を行った.さらに,心理実験を行い,分類された隠喩ごとに喚起される認知効果が異なることを確認した. (2)動詞に比喩性を持つ動詞隠喩に関して心理実験を行い,適切性を加味したカテゴリ化理論(適切性の高い隠喩ほどカテゴリ化過程で理解される)に基づく理解がされていることを実験的に明らかにした. (3)共感覚メタファーなどの形容詞隠喩や動詞隠喩の理解が2段階カテゴリー化過程によって行われるという2段階カテゴリー化理論を提唱した.そして,ベクトル空間モデル(潜在意味分析)による計算機シミュレーションを通じて,2段階カテゴリー化理論が他の隠喩理論よりも計算論的に妥当であることを示した.さらに名詞隠喩については,我々が以前から主張している解釈多様性理論が2段階カテゴリー化理論よりも妥当であるというシミュレーション結果が得られた. 2.隠喩と直喩の選好に影響を与える要因の特定およびそれらの処理過程の解明 (1)直喩の鑑賞過程(詩的度の認知)に関する心理実験を行い,隠喩の鑑賞過程の実験結果との比較を行った.その結果,全体的に直喩のほうが隠喩よりも詩的だと認知されること,隠喩の鑑賞過程(理解可能な隠喩の詩的度認知には審美処理が関係しない)と異なり,直喩の鑑賞過程には必ず審美処理が関係すること,その違いが理解過程の違い(カテゴリー化過程か比較過程か)に起因する可能性があることが明らかになった. 3.隠喩表現における隠喩の意味と文字通りの意味の処理過程の解明 (1)相互結合型ニューラルネットワークとベクトル空間モデルによる単語の意味表現を融合することにより,隠喩表現パターンから隠喩の意味を想起する計算モデルを構築した.そして,隠喩の意味と文字通りの意味の処理順序に関する既存研究のデータ(Blasko & Connine,1993)を再現することに成功した.
|
Research Products
(8 results)