2005 Fiscal Year Annual Research Report
ボロノイ・デローネイ空間分割と空間統計学との融合的研究
Project/Area Number |
17500188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
種村 正美 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (80000214)
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Keywords | ポアソン・ボロノイ・セル / ボロノイ・デローネイ解析 / ランダム逐次充填 / ランダム平衡充填 / Gibbs点過程 / Gibbs尤度法 / Hard-Coreモデル / 第k近接距離 |
Research Abstract |
空間に散布された多数の粒子の配置がデータとして与えられたとき、粒子配置の統計的性質を明らかにし、配置データがもつ情報を引き出すのが「空間統計学」であり、一方、所与の配置図データ(粒子座標)を元に観測領域を分割して得られるボロノイ・セルやデローネイ・セルの形状の統計分布から空間データの性質を導き出すのが「ボロノイ・デローネイ解析」である。本研究計画は、空間統計学のいわば補助的手段としての利用にとどまっていたボロノイ・デローネイ解析を詳細な情報抽出の手段として、また多様な統計モデルの構築手段として利用することによって、両者の融合を積極的に図ることを目標とする。本年度は三ヵ年計画の初年度として、研究代表者がこれまで行ってきたボロノイ分割,デローネイ分割に関わる研究テーマを中心にそれらの空間統計学との融合を目指す研究を多角的に開始した。ランダムな粒子配置の典型であるポアソン点過程に対するボロノイ・セルの統計分布の研究においては、4次元,5次元におけるポアソン・ボロノイ・セルの種々の特徴量に関する統計分布を精度良く求め、多変量の空間統計学へのプロトタイプを提出することができた(この成果を国際シンポジウムで発表した)。また、規則型粒子配置の典型である球のランダム充填モデルについて、本研究計画により新しく導入したUNIXワークステーションなどを利用してランダム逐次充填の計算機実験を大規模に行い、2,3,4次元におけるランダム逐次充填密度の精度の高い数値を求めるとともに、それらのボロノイ・デローネイ解析により、新しい性質を見出すことができた。この成果を論文としてまとめる準備をした。さらに、球のランダム平衡充填とも称すべき剛体球のGibbs点過程に対するマルコフ連鎖モンテカルロ法による計算機実験を2次元で行い、その粒子配置とランダム逐次充填の粒子配置とを統計的に比較した。その理由は、配置生成過程は異なるものの両者はいずれも重なりのない剛体球の(許された)配置であり、一見したところ違いが明確でないためである。まずHard-CoreモデルのGibbs尤度法(Ogata-Tanemura,1984)で比較し、ランダム平衡充填とランダム逐次充填の間に差が現れないことが判明した。理由はこの尤度法で用いられる統計量が粒子間最短距離のみであることによると推察された。次に、ボロノイ・セル、デローネイ・セルの統計的性質などで2種の配置を比較したところ、明確に違いが現れることが分かった。これらは極めて興味深い成果であり、研究所の年度研究報告会で一部を発表するとともに論文の準備を開始した。その他、第k近接距離分布による粒子配置の統計的診断法の開発、3次元ランダム・ネットワークのベイズ的統計解析研究などにも取りかかった。
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Research Products
(7 results)