2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経可塑性調節におけるNMDA型と代謝型グルタミン酸受容体の相互作用とその役割
Project/Area Number |
17500204
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 文子 東京大学, 医科学研究所, 助手 (00334277)
|
Keywords | 神経科学 / 神経可塑性 / 脳神経疾患 |
Research Abstract |
記憶・学習に深く関与する海馬では、イオン透過型と代謝型という複数種のグルタミン酸受容体を介してシナプス伝達が行われる。シナプス伝達効率の長期増強(LTP)ではイオン透過型であるNMDA受容体(NMDAR)が重要な役割を果たすことが知られている一方、代謝型(mGluR)の役割には不明な点が多い。既に従来の業績により、mGluRの活性化は可塑性の誘導閾値を下げてLTPを誘導しやすくすることを示したことから、本研究ではこの可塑性誘導閾値調節機構に着目した。特に、海馬切片においてはmGluR刺激はNMDARチロシンリン酸化を亢進することが示されたことから、まずNMDARのリン酸化の可塑性閾値制御における役割を検討した。既に、NMDARのサブユニットNR2BのY1472が強くリン酸化されるチロシン残基であると示されていたため、本年度の研究では、東京大学医科学研究所・癌細胞シグナル分野において作製されたNR2Bの1472番目のチロシン残基をフェニルアラニンに置換したノックインマウス(YFマウス)を用いて検討を行った。予備実験により情動依存的な行動に異常がみられたことから、まずは扁桃体外側核(LA)における可塑性の検討を行った。ホールセル記録によるNMDA/AMPA電流比にはYFマウスと野生型で変化は見られず、またAMPA受容体媒介性の微小シナプス電流の大きさにも変化が見られなかったことから、NMDA受容体によるシナプス応答の大きさには変化が無いと考えられた。一方、LAにおいて野生型ではシナプス後細胞の脱分極とシナプス入力のペアリング刺激により、50分以上持続するLTPが誘導されたが、YFマウスでは同じ刺激によりLTPはほとんど誘導されなかった。一方、野生型マウスの扁桃体ではNR2Bはカルシウム・カルモジュリン依存性リン酸化酵素2(CaMKII)と共沈するが、YFマウスではこのような結合が極めて弱く、さらに刺激依存的なCaMKIIリン酸化が顕著に減弱していた。これらの知見から、NR2BのY1472チロシンリン酸化はNMDA受容体シナプス応答よりはむしろ、NR2B結合分子群との親和性を制御することで受容体下流のシグナル伝達系を制御している可能性が示唆された。今後はこのマウスにおけるmGLuRシグナルを詳細に検討することにより、神経可塑性誘導閾値調節におけるNMDARシグナリングとmGluRシグナリングの相互作用およびその生理的意義を解明することを目指す。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Neuronal leucine-rich repeat protein 4 functions in hippocampus-dependent long-lasting memory.2005
Author(s)
Bando T, Sekine K, Kobayashi S, Watabe AM, Rump A, Tanaka M, Suda Y, Kato S, Morikawa Y, Manabe T, Miyajima A
-
Journal Title
Mol.Cell.Biol 25(10)
Pages: 4166-4175
-