2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17500209
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 栄一 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助手 (10283293)
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Keywords | 運動錯覚 / 頭頂葉 / 機能的核磁気共鳴装置 / 道具使用 / 空間認識 / 身体像 / 体性感覚 |
Research Abstract |
ヒトが手や腕を制御して外界物体に働きかける場合、自らの脳内に再現されている手や腕の身体座標や運動表象を基準として物体をとらえる必要がある。例えば、ある物体に手が届くかどうかの判断には、腕の長さや運動の内部表象が利用されていなければ意味がないし、物体や道具を身体の一部のように操作するためには、これらの外部表象が手や腕の運動表象と統合されなければならない。本研究では、脳が自らの身体座標や運動表象と外界物体の表象とをどのように関連づけ、どのように統合するのかについて、行動学実験および脳機能画像法を用いて明らかにすることを主目的とした。行動学実験より、目の前のある物体に手の到達運動を行う場合、手の運動に先立って、腕の実際の長さよりはむしろ腕の運動の内部表象が利用され、手がその物体に届くかどうかについての空間的認識がなされていることを示した(Inaba et al.2006)。また、手首の腱への適切な周波数での振動刺激が手の運動感覚を惹起する手法(運動錯覚;Naito et al.1999;2002a,b;2004a,b)を応用して、外部物体や道具が手の運動と一体化する場合の脳活動を機能的核磁気共鳴装置で測定した。その結果、手の左右に関係なく、外部物体と手の運動との一体化には左半球下頭頂葉の活動が重要な役割を果たすことがわかった(Naito & Ehrsson 2006)。これは、物体という外部表象と手の運動という内部表象が左下頭頂葉で連合されることを意味し、この脳部位の損傷がある種の失行症(道具使用法がわからなくなる)を引き起こすという医学的知見に関する基礎的な神経機序を明らかにした。手が外界物体に接触せずに単純に手の運動を認識する際には、手の左右に関係なく、右半球の前頭-頭頂葉の優位性が認められるため(Naito et al.2005)、これらの研究より身体空間内での四肢運動の認識やそれに伴う身体像のアップデートは主に右半球で処理され、手が身体外空間の物体と相互作用する場合には、主に左半球が身体内外空間を連合することを意味している。最後に、運動錯覚を応用して両手の幅で自分の胴体の幅を認識する際には、両側の高次体性感覚頭頂葉の活動がこの神経計算に関与し、かつこの活動が自分の身体像知覚を反映することも明らかにした(Ehrsson et al.2005)。
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Research Products
(9 results)