2005 Fiscal Year Annual Research Report
低分子ガスを介した新しい情報伝達系による脳微小循環機能制御機構の解明
Project/Area Number |
17500261
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梶村 眞弓 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10327497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 真実 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60212859)
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Keywords | carbon monoxide / nitric oxide / pial microcirculation / NO imaging / diaminofluorescein |
Research Abstract |
ガス状メディエータは生体内で生成される低分子で細胞膜を他の物質に比べて容易に通過して蛋白質や脂質・糖質・核酸などの他の生体構成成分と特異的に結合する分子群である。このような分子群のうち一酸化窒素(NO)や一酸化炭素(CO)のみならず、生体内でcysteineの分解にともなって生成される硫化水素(H_2S)が神経伝達や血管弛緩に関わる新しい分子として注目されている。本研究はCOやNOやH_2Sのガス分子が高レベルで存在する脳組織をモデルに、これら複数のガス分子が生物活性を発揮するメカニズム及び神経・血管系におけるガス分子の生成及び受容機構を包括的に解明することを目的とした。免疫組織学的検討により、脳においてはHO-2の発現している細胞に必ずNOS1,3が共発現していることが明らかになった。次にcranial window techniqueを用いて軟膜微小循環局所を生体顕微鏡学的に観察し、人工髄液灌流をしつつ細動脈を観察し、NO感受性色素DAF diacetateを添加することによりNOのバイオイメージングを行った。脳表面から数100ミクロンの深さまでを共焦点レーザー顕微鏡によりスキャンして内部の脳軟膜直下の微小血管の観察を可能にした。NO生成を示すDAF蛍光はHO阻害剤であるZnPPを局所投与すると時間依存性に増加した。HO阻害効果のないCuPPではこのような変化は起こらなかった。HO阻害によるNOの増加は血管内皮細胞だけでなく脳実質でも観察され、人工髄液中に10 microMのCOを灌流すると略完全にNOの増加が抑制された。また局所のNOS活性を阻害するべく阻害剤(L-NAME)を投与してもNOの増加は抑制された。この間、血管径はHO阻害によるNOの増加時には拡張、COによるNOの低下時には収縮を示した。以上の結果から局所のHOから生成されるCOがNOによる血管拡張反応の抑制機構として働いていることが明らかになった。COがNO生成を抑制する機序について培養血管内皮細胞を用いてさらに検討を進めた。NO生成をDAFで画像化して時間経過を追ったところ、正常細胞では時間依存性にNO生成が起きているのが確認できた。ここにCO-releasing molecule (CORM)を添加するとNO生成は低下しin vivoでの所見と一致した。次にこの反応がCOのヘムへの結合によるものであるかどうかを検証するために、可視光の照射による解除を検討した。COのヘム酵素への結合はNOや酸素の結合に比べて光感受性が高いことを利用したものである。光照射によってCORMの効果は抑制された。またこの変化はNOSのリン酸化による翻訳後修飾(Ser-1177)を介さないことも明らかになった。
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Research Products
(3 results)