2005 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脊髄後角ニューロンにおける痛み伝達に及ぼすホスホリパーゼA_2活性化の効果
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17500275
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
熊本 栄一 佐賀大学, 医学部, 教授 (60136603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 亜美 佐賀大学, 医学部, 助手 (70336139)
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Keywords | excitatory transmission / phospholipase A_2 / arachidonic acid / nociception / rat / spinal dorsal horn / substantia gelatinosa / whole-cell patch-clamp technique |
Research Abstract |
研究の目的は、脊髄後角の痛み伝達におけるホスホリパーゼA_2(PLA_2)の役割をシナプスレベルで明らかにすることである。今年度は、皮膚末梢から脊髄に入力する痛み情報の制御に重要な役割を果たす脊髄後角第II層(膠様質)における興奮性のシナプス伝達に対して、PLA_2を活性化することが知られているメリチンがどんな作用を及ぼすかを調べた。実験は、成熟雄性ラットから脊髄横断スライス標本を作製し、膠様質ニューロンに通常のブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用することにより行った。メリチンは濃度依存性に自発性興奮シナプス後電流(sEPSC)の発生頻度を増加させた。Hillプロットにより解析すると、そのEc_<50>値は1.1μMであった。この作用はPLA_2阻害剤(4-bromophenacryl bromide,10μM)、細胞外Ca^<2+>除去、Ca^<2+>チャネル阻害剤La^<3+>(30μM)により抑制される一方、アラキドン酸(AA)の代謝に働くcyclooxygenase(COX)の阻害剤であるindomethacin(100μM)、またlipooxygenase(LOX)の阻害剤であるnordihydroguaiaretic acid(100μM)により影響を受けなかった。メリチンによるものと同様なsEPSCの発生頻度増加はAA(50μM)によってもみられた。以上より、脊髄後角のPLA_2活性化により生成されるAAは、COXやLOXの働きによるその代謝経路を介さずに神経終末の膜電位依存性Ca^<2+>チャネルを通って細胞外から細胞内へ流入するCa^<2+>量を増加させることによりグルタミン酸放出を促進することが明らかになった。このPLA_2活性化による興奮性シナプス伝達の促進作用は痛み伝達の促進に寄与することが示唆される。
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Research Products
(7 results)