2006 Fiscal Year Annual Research Report
外傷性脳損傷後の記憶障害に対する海馬歯状回ニューロン再生の効果
Project/Area Number |
17500279
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
赤須 崇 久留米大学, 医学部, 教授 (60113213)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮尾 博 久留米大学, 医学部, 助教授 (90172882)
武谷 三恵 久留米大学, 医学部, 助手 (30289433)
|
Keywords | 脳外傷後遺症 / 歯状回及び海馬CA1領域 / ジアゼパム / グルタミン酸作動性神経 / NO除去効果 / 抑制性シナプス伝達 / てんかん / 記憶障害 |
Research Abstract |
我々はこれまで、液体打撃法(fluid percussion in jury : FPI)を用い、実験的頭部外傷モデルラットを作製し、歯状回及び海馬CA1領域の神経活動について光学的測定法と電気生理学的記録法を用いて検討した。頭頂葉への打撃から7日後に、脳表面より約4-5mmの深さに位置する歯状回や海馬では神経の脱落や著明なグリア細胞の発芽は認められないにもかかわらず、グルタミン酸作動性シナプス伝達が過剰に亢進した。しかし、GABAニューロンの機能にはほとんど障害が見られなかった。記憶のモデルである長期増強(long-term potentiation : LTP)は外傷モデルラットで強く障害されていることがわかった。このことから外傷直後にグルタミン酸放出が過剰に起こり、病的なLTPへと進行したものと考えられた。頭部外傷後早期(30〜90分後)に、ラットの腹腔内にジアゼパムを投与したり、外傷後、一定時間低体温に保つことによって液体打撃後の遅発性過興奮が阻止され、脳保護効果(protection)が得られた。LTPの発生にNOが深く関与することが知られているが、NOスカベンジャーであるエダラボン(edaravone)を外傷後早期に投与すると、グルタミン酸作動性シナプス伝達の過剰亢進が改善し、LTPの障害も阻止された。この薬物は最近、臨床的にも一部使用されており、頭部外傷後遺症の治療薬として有効性が支持された。平成18年度では上記の研究に時間がかかり、グルタミン酸受容体の増加や神経の異常発芽については現在進行中であるが結論に至っていない。しかし、本研究によって、頭部外傷後のてんかんや記憶障害の改善を示す薬物が見いだされたことが大きな成果といえる。
|
Research Products
(26 results)