Research Abstract |
糖尿病性腎症モデルラットに対する長期的運動(EX),アンジオテンシンH受容体拮抗薬losartan(LOS)の併用療法による,運動耐容能,腎機能,腎組織障害,蛋白尿(UP),骨格筋線維組成,骨格筋毛細血管密度,骨格筋酸化能,骨代謝速度,骨塩密度に対する影響を検討する. 【方法】後藤-柿崎ラットに片腎摘手術を行い,高カロリー食と30%ショ糖溶液を与えた.UPが300mg/dlを超えた後に4群に分け[(1)非治療(C)群,(2)EX群,(3)LOS(5mg/kg/日)群,(4)EX+LOS群],12週間治療した.EXは速度20m/分の連続走行を1回60分間,1週間に5回行った.2週間毎に収縮期血圧(SBP),4週間毎にUPを測定し,最終日に断頭採血,残存腎および長趾伸筋摘出を行った.EX開始前と12週間後にトレッドミルテストを行い,総走行可能距離(TRD)を評価した.残存腎では糸球体硬化指数(IGS)と皮質間質容積比(RIV)を算出した.また,3種の抗体(ED-1,WT-1,α-S漁)で染色し,マクロファージ,足細胞,平滑筋の様態を評価した.更に,長趾伸筋のタイプI線維比,毛細血管/筋線維比(C/F),毛細血管密度(CD)を解析した. 【結果】速度20m/分走行時の酸素摂取量は最高酸素摂取量の約75%であった.EX,LOS,EX+LOS群のUP,IGS,RIVはC群に比して有意に改善した.特にEX+LOS群のIGS,ED-1発現,α-SMA発現は他の3群に比較して最も低値を示し,WT-1発現は最も高値であった.EX,EX+LOS群のTRDはCおよびLOS群に比較して有意に長距離であった.更に,EX,EX+LOSは有意な毛細血管増加効果とタイプ1線維増加効果を示した. 【結論】EXによる持久力増強作用,EXとLOSによる腎保護作用,EXとLOSの併用による腎保護作用の増強効果が示唆された.また,EXとLOSは糸球体でのマクロファージ浸潤や線維芽細胞増殖を抑制し,メサンギウム細胞の活性化や足細胞の分化に影響を与えて腎保護効果を発揮する可能性が示唆された.更に,EXは,体力(持久力)の改善に重要なタイプI線維比や毛細血管を増加させることが示唆された. 以上のように,糖尿病性腎症における運動療法の有効性の機序を解明する重要な知見が得られた.
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