2006 Fiscal Year Annual Research Report
自発的言語教示を用いた半側空間無視のリハビリテーション技法の開発
Project/Area Number |
17500357
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
関 啓子 神戸大学, 医学部, 教授 (90154640)
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Keywords | 半側空間無視 / 言語的教示 / 病識 / リハビリテーション / 自発的 / 視空間性課題 / 代償 |
Research Abstract |
本研究は右半球損傷者には困難とされる視空間性課題の遂行過程に言語化という作業を加えて課題遂行を促進する代償的技法の開発を目的としている。言語的教示の有効性自体は我々の先行研究から立証済みであるが,患者自身による自発的自己教示の乏しさという大きな障害がある。我々はその背景に病識の不足があると考え,平成17年度は左半側空間無視患者を対象に左同名半盲の有無と病識の関係について検討した。 平成18年度は言語機能を用いた課題の検討を行った。脳損傷者のリハビリテーション技法で言語の有効性が確認されたもの(Robertson et al.,1995;Seki et al.,2002など)はいずれも外的教示が必要であり,患者自身の自発的な言語機能の代償的利用の成果報告はない。上述のように右半球損傷者は病識が不足しており,たとえ有効な方法であったとしてもその技法を自ら行使することが難しい。そうであるなら,健常者が無意識のうちに日常的に行っている「言語による行動制御」をリハビリテーション技法に取り込めば,病識不足の右半球損傷者にとっても利用可能となるのではないかと我々は予測した。そこで,健常高齢者を対象に視空間性課題を実施し,課題解決の過程において言語を用いることがあるか否か,あるとすればどのような課題でよく観察されるかについて検討を行った。 対象は神経学的既往歴のない地域在住の健常高齢者30名(男性10名,女性20名)で,平均年齢は66.7±3.9歳,平均MMSE得点は28.5±1.6であった。実験1ではパソコンの画面上に種々の視空間性課題(形状の認識,図形の記憶,異同弁別など)を呈示し,課題遂行過程において言語化されやすい課題があるか否かを検討した。次いで,選択した視空間性課題に言語的要素を加えた課題を作成し,現在はこの課題の遂行過程を検討する実験2を実施してデータを収集中である。
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