2006 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害児及び視覚障害児のダンス表現に現れる運動のダイナミクス
Project/Area Number |
17500401
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Research Institution | TOTTORI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐分利 育代 鳥取大学, 地域学部, 教授 (60093598)
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Keywords | 聴覚障害児 / 視覚障害児 / ダンス表現 / 運動のダイナミクス |
Research Abstract |
聴覚障害児のダンス表現が豊かなリズムを伴い、視覚障害児のダンスも空間の変化を伴って現れる。そのダンスは、障害の種類や有無に関わらず誰とでも共有できる。この共有できるものは、対象から得たイメージ、すなわち対象が持つ質的特性、であり、ダンスでは運動のダイナミクス(ルドルフ・ラバンは力、時間、空間、流れに分析し、運動の質的解析を行っている)を通して現される。 本研究ではこの表現の対象が放つ質的特性(ダイナミクス)を、聴覚障害児、視覚障害児がどのようにとらえ、運動のダイナミクスとしてダンス表現しているのかを探ろうとした。 まず、共に5年のダンス学習経験を持つ聾学校と盲学校中学部3年生女子の、原体験を共にした即興表現を比較した。即興表現『花火』を鑑賞したダンス経験の少ない大学生は、どちらも花火に見えると評価した。コミュニティーダンス指導者の観察では聴覚障害児の表現が、「よりクリアな」と評され、ラバノーテーション指導者は、視覚障害児の表現は「身体の中心からの」動きと指摘した。ラバンの運動解析専門家は、花火の即興表現における聴覚障害児の動きのダイナミクスは、空間と時間、流れに由来し、視覚障害児の運動のダイナミクスは力、時間、流れに由来すると評定した。 「クリア」なと評された聴覚障害児の表現は、見えたままを指先まで使って表現し、身体支配空間も広いものだった。これに対し、視覚障害児では、腕の動きは肘までで終わっており、身体支配空間も小さい特徴があった。これについて視覚障害のある表現者自身も、動きは身体の中から次々出てくるが「手にまでは伝わらん」としている。「身体の中から」と評されたことが表現者自身にも自覚され、その結果として動きが形を持ったと考えられる。時間、流れの要素が、両障害者に共通しており、これがの共感の手がかりといえる。 聴覚障害児、視覚障害児、障害のない大学生が砂丘をテーマに創作した合同作品『砂の世界』では見える者がとらえた風紋や、聞こえる者がとらえた波にさらわれる砂、一緒に体験した砂があたっていたい足、砂丘を登る時の動きのダイナミクス等が共有され、作品全体のダイナミクスの変化も共有された。聾学校生だけで創った翌年の作品では、「聞こえない」ことをテーマに「見えない」こと照らしながら作品『音と光』を創った。合同でダンス作品を創り、発表した経験が障害者同士も理解し合う手がかりとなれることもわかった。
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