Research Abstract |
本年度は,ヒト(指導者)がヒト(顧客)に対して対人的にスポーツサービスを提供するという事業を営むヒューマン・サービス組織として民間スポーツ・フィットネスクラブ経営組織を措定し,そうしたクラブ経営組織における「関係性マーケティング」の戦略的枠組みについて研究を実施した。 第一に,マーケティング関連図書や文献などのレビューから,関係性マーケティングの戦略的枠組みを「サービス戦略」(山下ら,2003)という観点から構築した。具体的には,スポーツサービスそれ自体が無形であることに対応するために,マークやシンボル,象徴的な色や音楽などで視聴覚的に表現することで,クオリティの良さを象徴し,顧客が安心して購入できる環境を創造する「有形化戦略」,スポーツサービスが物財のようには在庫できず,生産と消費が同時に起こるので,需要と供給のバランス関係を調整し平準化させる「同期化戦略」,スポーツサービスは1回限りで消えてしまうので,クオリティ・イメージを保証できるよう,ブランド・イメージの一貫性や統一性を訴求する「同一化戦略」,スポーツサービスは一連の流れをもつプロセスで,顧客はサービス活動の結果だけでなくプロセスも体験しなければならないので,顧客を共同生産者として捉え,そうしたプロセスをシステム的に効率よく進める「システム化戦略」,そしてスポーツサービスには全く同じものがないので,クオリティに大きなバラツキが出ないように配慮する「同質化戦略」といった5つがそれである。 第二は,関係性マーケティングの5つのサービス戦略要素をクラブ会員がどの程度重要視しているかを把握するために,民間スポーツ・フィットネスクラブ(3ヶ所)の会員に対する質問紙調査(留置法と直接手渡法)を実施し,443,73.8%の有効標本回収数及び回収率を得た。その結果,同質化戦略,有形化戦略,システム化戦略という順に,会員の重要度得点が高かった。
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