Research Abstract |
本年度は,第一に,昨年度に構築した仮説的概念モデルである,「ヒューマン・サービス組織」(中西,2007)として民間スポーツ・フィットネスクラブ(以下「民間クラブ」という)の「関係性マーケティング戦略モデル」(有形化戦略,同期化戦略,同一化戦略,システム化戦略,同質化戦略)について,クラブ会員の視点から実証的に検討した。会員調査の結果(留置法と直接手渡法により,443,73.8%の有効標本回収数及び回収率が得られた),クラブ会員から見た関係性マーケティング戦略としては,(1)同質化戦略,(2)同期化戦略,(3)有形化戦略,(4)同一化戦略といった4つが構成概念として支持された(Amos7.0Jによる適合度指標はGFI=.949,AGFI=.923,CFI=.962,RMSEA=.046,AIC=250.737で,すべて十分な値であった)。なお,システム化戦略についてはその有効性が認められなかった。 第二に,フィットネスビジネス編集部が運用するホームページ「フィットネス・オンライン(http://www.fitnessclub.jp/)」に登録されている2,898ヶ所の民間クラブの中から1,000クラブを無作為に抽出し,関係性マーケティング戦略活動に関する調査を行った結果(196,19.6%の有効標本回収数及び回収率が得られた),「情報技術(IT)」を基盤とする顧客関係性マーケティング活動の重要性が示唆された。具体的には,「会員情報データベースの構築と活用」「会員のクラブ利用履歴・プログラム等参加履歴に関するデータベースの構築」「Webページ(ホームページ)の開設と顧客からの問い合わせの受付・対応」「フリーダイヤル(0120)の準備」「顧客関係マネジメント・システムの構築」などの戦略的活動が「現会員との良好な関係形成・強化のためのマネジメント活動」であるという結果が得られた。また,(1)同質化戦略,(2)同期化戦略,(3)有形化戦略,(4)同一化戦略といった4つの戦略活動の重要性も示唆された。このようなことから,今後は,情報技術をも包含した関係性マーケティング戦略モデルの構築に取り組んでいくことが喫緊の課題であるものと思料される。
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