2005 Fiscal Year Annual Research Report
長期運動がもたらす脳卒中発症遅延効果と延命効果-標的分子の解明
Project/Area Number |
17500489
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
丹羽 淳子 近畿大学, 医学部, 助手 (60122082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東野 英明 近畿大学, 医学部, 教授 (40122098)
石塚 俊晶 近畿大学, 医学部, 講師 (30399117)
田渕 正樹 近畿大学, 医学部, 助手 (20340771)
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Keywords | 運動 / 高血圧 / 脳卒中発症予防 / 血管内皮機能 / NO(一酸化窒素) / 酸化ストレス / 血管リモデリング / シグナル伝達分子 |
Research Abstract |
運動量測定回転ケージを使って、雄性SHRSPを高血圧発症前の6週齢より2ヶ月間自発的に運動させた(運動群)結果、運動後5週後と6週後にのみ有意な収縮期血圧の低下を認めた。血管の病理組織化学的検討により、運動群では、中膜平滑筋層の肥厚と平滑筋細胞の肥大また繊維化(コラーゲン量)の著明な抑制が明らかとなった。脳卒中発症について、非運動群が全例発症したのに対し、運動群の発症率は約半数に減少し、有意な発症予防と延命効果を認めた。また脳組織の免疫組織化学検討により、脳浮腫およびマクロファージの浸潤の著明な抑制が観察された。 運動による血管リモデリングの抑制ならびに脳卒中発症予防効果のメカニズムを明らかにするため、血管内皮機能維持に重要なNO産生と酸化ストレスの変化について検討した。大動脈の内皮型NO合成酵素(eNOS)はmRNA、蛋白(ser1179リン酸化)、活性およびNO産生量ともに運動群で有意に増加した。さらにAktリン酸化の有意な増加が認められ、運動によるNO産生(eNOS活性化)にPI3-Aktキナーゼ系が関与することが示唆された。一方、血管における酸化ストレス(superoxide産生、ニトロチロシン生成)は有意に抑制され、主要なラジカル産生酵素のNADPHオキシダーゼのNOX1とNOX4サブユニットのmRNA、蛋白発発現の有意な低下が認められた。さらに運動群では血管AT2受容体の発現が有意に増加し、AT1受容体の発現が低下した。血管組織アンジオテンシン変換酵素発現には変化はなかった。 これらNO availabilityの増加(酸化ストレスの減少)を介する細胞内シグナル伝達系の変化を、MAPキナーゼ系との関わりについて検討した。運動群ではリン酸化(p) ERK1/2、p-p38、p-JNKレベルが有意に低下し、これらのストレスMAPKの転写制御によって血管リモデリング抑制に関与すると考えられた。またMCP-1、TNF-α、接着分子(sICAM-1)、PAI-1の血清レベルの有意な低下も認められ、炎症反応を抑制し血管保護作用に関与することが示唆された。
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