Research Abstract |
研究の目的:昨年の研究から、低栄養ハイリスク者に低栄養プログラムを実施した結果,対照群と比較してエネルギー,たんぱく質摂取量の維持,自分で食事を作る頻度の増加,卵や乳製品など動物性食品や緑黄色野菜の摂取に改善がみられた。また,低栄養改善以外にも教室参加による社会交流・余暇活動に改善がみられており,これらは生活自立に役立つと思われる。本年度は同プログラムを栃木県内の壬生町高齢者に実施し,低栄養プログラムの介入を行い,その評価を試みた。 対象と方法:壬生町在住で65歳以上住民健診受診者の血清アルブミン値は3.8g/dl以下の割合はわずか2.6%と低くさらに3.5g/dl以下の人は1人のみであった。そこで,低栄養ハイリスク者である一人暮しや老夫婦のみ世帯,男性高齢者を対象に,広報にて参加者を募集して行なった。参加者は計20名(男8,女12)で平均年齢は男68歳,女73歳であった。低栄養介入プログラムは食事づくりとクック10法(テンホウ)の実施を中心に,(1)食事量・食欲低下の防止、(2)調理技術の向上,(3)自分たちで作った料理を皆でおいしく食べ,共食の楽しさを味わうことを目的として行なった。調査および研究協力者は保健師,栄養士,壬生町在住の「健康づくり推進員」が中心となり,食材は地場でとれた時期のものを使い、「地産地消」を基本とした食事づくりを行った。 実施時期:介入は6月半ば〜8月までの8回コース(事前説明1回,調理実習6回,事後報告1回)とした。 調査項目:1)身体計測、血圧2)血液生化学検査(血算,血清総コレステロール,TG, HDL-コレステロール,血清アルブミンなど)3)面接調査:属性,基本的生活動作能力(ADL),そしゃく能力,家族構成,食事づくりなど4)食事チェック「クック10法」の実施 結果:教室の目的のひとつは低栄養予防であったが,その評価となる血清アルブミン値をみると,低栄養者はなく,むしろ体格がよく高血糖,高脂血症などが多かった。血液生化学検査値の介入前後の変化は,血清アルブミン値は男性平均4.2,女性は4.3であり,介入後は有意な差がみられなかった。高TG者で高脂血症の改善がみられた。「クック10法」の開始前後での比較を行ったところ,1日当たりの食品摂取スコアは増加傾向にあり,1週間当たりの食品群別摂取日数は肉・卵および緑黄色野菜に有意な増加,乳製品に増加傾向がみられた。食事づくりの介入を通して,血清アルブミン値が正常な高齢者、短期期間においても,食品摂取状況に改善がみられた。
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