2005 Fiscal Year Annual Research Report
担子菌の発酵能を用いた健康・機能性アルコール飲料の開発
Project/Area Number |
17500570
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mukogawa Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
松井 徳光 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 助教授 (20211807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 祥子 武庫川女子大学, 生活環境学部, 助手 (50399135)
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Keywords | 担子菌 / アルコール飲料 / ワイン / 清酒 / 機能性食品 / 抗トロンビン活性 / 抗酸化活性 / 血栓症 |
Research Abstract |
本研究では、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症およびガンを予防する健康・機能性アルコール飲料の開発を主目的として約200種の担子菌を用いて、担子菌のアルコール発酵能を利用したワインおよび清酒の製造を試みた。 ワイン製造では、官能検査の結果も良く、機能性にも優れているワイン製造に適していると考えられた担子菌はスエヒロタケであった。また、スエヒロタケで発酵させた場合、発酵後期にpHの減少が見られたため、pH維持を目的として0.1%のクエン酸ナトリウムを添加したブドウ果汁液における発酵ワインについても検討した。その結果、血栓症や種々の成人病予防に効果を示すことが報告されている抗トロンビン活性(トロンビンタイム法)、抗酸化活性(化学発光法)が、担子菌で発酵させていないブドウ果汁液ではそれぞれ65.3秒、77.3%阻害であったのに対して、スエヒロタケで発酵させたワインでは87.4秒、78.1%阻害であり、ブドウ果汁液にクエン酸を加えてスエヒロタケで発酵させたワインでは300秒以上、95.1%阻害であった。また、担子菌で発酵させたワイン中に多量のビオチンが検出され、担子菌で発酵させたワインの特徴の一つとして考えられる。したがって、担子菌の発酵能でブドウ果汁液がワインとなり、さらにブドウ果汁液に0.1%のクエン酸ナトリウムを加えて発酵させることにより、抗トロンビン活性と抗酸化活性において高い活性を示す機能性に優れたワインを製造することが可能であると考えられる。しかしながら、培養6週間で3.38%(クエン酸入りの場合は1.74%)のアルコール濃度しか示さなかったことから、さらなるアルコール生産のための条件検討が必要である。 一方、清酒製造では、蒸米および炊飯米に生育した担子菌を選択し、これらを「きのこ麹」および「掛米」として滅菌水を加えて培養を続けた結果、『担子菌単独』で糖化とアルコール発酵を行わせたもののうち、最も高いアルコール濃度を示したのはエノキタケ(アルコール濃度2%)であった。一方、種々の生理活性を示したものはマイタケを発酵に用いた場合であり、抗トロンビン活性、抗酸化活性は、担子菌で発酵させていない米液ではそれぞれ約42秒、約10%阻害であり、市販の清酒(こうじかびと酵母による発酵)が81.8秒、2.52%阻害であったのに対して、『マイタケ単独』の発酵(糖化とアルコール発酵の両方を本菌株のみで行う)が300秒以上、94.17%阻害であり、さらに、糖化過程後に酵母を加えて発酵させた場合では300秒以上、72.17%阻害を示した。したがって、『マイタケ単独』および『マイタケと酵母との併用』で発酵させた清酒には従来の清酒では存在しなかった抗トロンビン活性および抗酸化活性などの生理活性が付加されており、機能性に優れた清酒を製造することが可能であると考えられる。
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Research Products
(1 results)