Research Abstract |
本年度の目的は図形領域における小学校算数科と中学校数学科の連続性を考慮した指導方法を確立するために,課題3(児童・生徒の実態を踏まえ,理論的に抽出されている要因を生かして構想された授業を実施し,その効果を調べる)を解決することであった。実際には,実態調査の結果を考慮して中学校2年生における図形の証明の単元内での学習指導を構想することによって,その授業の効果の検証が昨年度から本年度にかけて行われた。しかし,その効果は少なかった。そのため,指導要因についての検討を加え,改善し,その結果を考慮して再度授業を本年度末に実践した。その結果は分析途中であり,来年度に結果を発表する予定である。 また,本年度は以下の2点について発表した。第一に,図形学習後の小学校6年生と図形の定義学習前の中学校2年生における定義の捉え方の実態を明らかした。小学校6年生と中学校2年生における長方形,ひし形及び平行四辺形の定義の捉え方を比較することにより,この学年間で図形の定義を性質の列挙と考えている人が増えるが,それ以外の捉え方には変化が見られないことが分かった。第二に,図形の定義についての検討場面を取り入れた授業により,具体的に生徒の図形の定義についての捉え方及び図形の包摂関係についての理解が変容することを明らかにした。数学の一般的定義と捉えるようになり,図形の性質を列挙すること,否定的な表現を用いること等が減少し,一定の効果は得られたが,その割合が少ないことも分かった。また,長方形,平行四辺形及び二等辺三角形についてはより特殊な図形を含めて考えるようになり,定義を適切に捉えた生徒はある図形がそれより一般的な図形に含まれるかどうかの判断はできるが,その判断を,概念イメージに当てはまる図を選ぶ際に用いていないことが分かった。
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