スペシャル・ローン・コレクションの物理実験機器の系譜と日本の科学教育への影響

2007 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 17500679
• Research Institution: Miyagi University of Education
• Principal Investigator: 永田 英治 Miyagi University of Education, 教育学部, 教授 (20164428)
• Keywords: スペシャル・ローン・コレクション / サウス・ケンジントン博物館 / 教育博物館 / 19世紀科学史 / 19世紀科学教育氏 / 科学教育 / 物理学教育 / 科学機器

Research Abstract

今年度の研究によって,1876年,ロンドンのサウス・ケンジントン博物館で開かれたスペシャル・ローン・コレクションについて,今年度における補完的調査を含めてこれまでの調査をまとめ,ほぼその全容を明らかにすることができた。
つまり,1.スペシャル・ローン・コレクションの前史,2.スペシャル・ローン・コレクションの企画・活動,3.展示された科学機器とそれらの由来,3.諸活動を担った人々,4.イギリス科学教育への波及,5.明治期日本の科学教育の移入活動との相似点,およびスペシャル・ローン・コレクションの活動の日本への断片的な紹介のいくつかの事例である。
特に今年度補完できた調査には,スペシャル・ローン・コレクションの前史として,1850年代のサウス・ケンジントン博物館教育部門の展示活動とチルドレン・ギャラリーがある。また,同コレクションの実務を担った科学・教育局が行った教員講習とも連動していたことを明らかにすることができた。このことによって,1880年代に日本の教育博物館が行った科学(物理)機器の普及活動と各地の物理学教授法講習への支援,通俗講演会の開催との相似性が明らかになり,それらを指導した市川盛三郎,手島精一,西村貞らの渡英との関連性が高いことが明らかとなった。残念なことに,教育博物館に保有されていたスペシャル・ローン・コレクション関係資料を日本にもちこんだ経緯はまだ直接明らかにできていない。つぎの研究課題となるだろう。
これらの調査の中間発表は,「サウス・ケンジントンに集った科学者たち-スペシャル・ローン・コレクションの物理実験機器の系譜と日本の科学教育への影響-」(日本科学史学会東北支部例会・第137回,2007.2.11),および「理科教科書とものづくり教材」(日本理科教育学会第46回東北支部大会,2007.11.10)の「前史」として報告した。今年度の調査結果を加えて,「スペシャル・ローン・コレクションと19世紀イギリスにおける科学教育の制度化,明治初期日本における科学教育の移入への影響」をまとめて,発表できるだろう。