2005 Fiscal Year Annual Research Report
1970〜1980年代におけるマイクロプロセッサー開発とパソコン技術の歴史的展開
Project/Area Number |
17500687
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐野 正博 明治大学, 経営学部, 教授 (70206001)
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Keywords | 技術戦略 / 技術史 / パソコン技術 / マイクロプロセッサー |
Research Abstract |
1970〜1980年代におけるマイクロプロセッサー開発とパソコン技術の歴史的展開に関して、資料調査を行うとともに理論的分析作業をおこない、その歴史的展開プロセスに関して下記のような暫定的結論を得た。一般的にはパソコンのドミナント・デザインということで、マイクロソフト社のOS(MS DOS、Windows OS)と、インテル社のx86アーキテクチャのマイクロプロセッサーという組み合わせで議論されることが多い。しかし技術的内容から言えば、マイクロソフト社のMS DOSというOSは8bitパソコン時代の主流OSであるデジタルリサーチ社のCP/Mと単なる機能的レベルではなくソースコード・レベルにおいても極めて高い類似性=連続性を持ったOSである。またインテル社のx86アーキテクチャを現代にいたるまでパソコンの主流とさせる契機となったマイクロプロセッサーの8086は、オブジェクト・コードのレベルにおける互換性までは確保されてはいないが,アセンブリ言語のレベルでは1対1に対応する命令セットが利用可能になっている。 このようにIBM PCの基本的技術的構成におけるOSやマイクロプロセッサーは、1978年頃に確立した8bitパソコン時代の技術的構成を踏襲したモノであった。またIBM PCにおけるオープン・アーキテクチャも、それ以前のMITS社のAltair8800(1975)やアップル社のApple II (1978)などに見られるように一般的モノであった。 1980年代前半におけるIBMのパソコン製品戦略は、こうした意味で1978年頃に確立した8bitパソコン時代の技術戦略を踏襲したモノとして位置づけることができるとともに、1980年代前半におけるIBMの成功はそうした技術戦略の有効性として理解することができる。そしてまた、1980年代後半におけるIBMの「失敗」は、1987年のIBM PS/2で採用されたOS/2とマイクロチャネル・バスという技術的構成が、IBMのそれまでの互換性維持重視戦略とオープン・アーキテクチャ戦略から逸脱した動きの結果として理解することができる。
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